2018.4.16
FIRE REPORT #147 あらゆる消防行政ニーズに対応できる人材を育成する消防活動総合センター
災害に立ち向かい、市民を守る拠点
京都市消防活動総合センター
建設当時、団塊世代職員の大量退職により、10年で全職員の約4割が入れ替わることが予測された京都市消防局において、ベテラン職員の知識や経験、技術の伝承を図るとともに、あらゆる消防行政のニーズに対応できる人材育成の場として整備されたのが消防活動総合センター。平時における訓練・研修だけでなく、大規模災害時の緊急消防援助隊への活動支援機能もあわせ持った全国初の総合的な消防活動拠点として平成21年に全面運用が開始された。消防学校が大規模災害時に作戦情報室になるなど、徹底した機能の統合・合理化をめざして設計されている。
名神高速道路京都南ICや国道1号線に近接し、各方面へのアクセスに優れる。桂川に沿って広がる敷地は約34,000㎡。
活動支援施設
東日本大震災時、西日本から現地に向かう緊急消防援助隊の経由地としても使用された。消防車両は最大471台を収容可能(写真左)。備蓄倉庫には大量の災害対策備品が保管される(写真右)。
京都市消防学校・京都府立消防学校
センター敷地の一角には京都市消防学校・京都府立消防学校と京都市救急教育訓練センターの入る棟がある。消防学校は平成29年度から京都府との合同となり、教育を受ける初任教育生の数も増加。明日の防災を担う新規採用消防職員や消防団員が日々研鑽を積んでいる。
あらゆる災害を想定した訓練施設
センターには、京町家や3階建て住宅などの京都の特徴的な町並みを自由に再現できる全国初の街区訓練場をはじめとして、高層ビル火災、水災害、山岳救助など、あらゆる災害を想定した実践的な訓練が実施できる施設がそろう。消防局全体で偏りなく「先人の知恵の伝承」を図るため、訓練は消防救助課や技術指導課、救急課などにより統一された要領のもとで実施される。
総合訓練棟
地上5階地下1階の構造で、地下火災から高層ビル火災、地震災害まで、さまざまな災害状況に対応した高度な訓練が可能な各種施設が整う。無駄のないスペース活用のため、設計前の段階で幾度も検討を繰り返した。
山岳訓練場
総合訓練棟の一部壁面は急峻な岩肌を模しており、センターにいながらにして山岳地を想定した救助訓練が行える。
実火災訓練室
杉や藁を燃やし、火災の進行にともなう煙の充満状況や熱をリアルに再現できる実火災訓練室。実際の炎や煙を体験し訓練することは、若手消防士の経験値向上に非常に効果があるという。
くっきりとわかる中性帯。屋内進入時は放水前の視界が効くうちに要救助者の検索、ルート確認を行うなど、プロフェッショナルな判断力を実体験のなかで徹底して鍛える。
過去の火災現場で推定1200度の炎にさらされて大きなダメージを受けた防火衣が展示され、その恐ろしさを伝えている。これを着ていた隊員は手順どおり姿勢を低くとっていたおかげで耳たぶの火傷だけで済んだという。
街区訓練場
木造家屋密集地を模した街区訓練場では、京都市消防局のすべての消防隊・救助隊が繰り返し訓練を行い、現場で反射的に動けるまでのスキルを養う。ここで培われた屋内進入、放水、延焼防止の技術が「京都消防の屋台骨を支えている」と技術指導課の小林知之消防司令は語る。
ランプで示された火点に向けて放水する様子。火点の位置や数は都度変更することができる。また、訓練の様子は毎回ビデオ撮影され、後の検討の材料となる。
市内の消防署所から次々と訓練に訪れる。
水災害対応訓練施設
平成25年台風18号の教訓から設けられた施設で、水没した車両からの救助訓練などを実施する。激しい降雨や流水も再現でき、水防訓練にも使われる。
潜水訓練場
屋内・水上訓練棟の屋上には25mのプールに加え、水深10mの潜水プールも備える。大量の気泡を発生させて視界不良の状況下で潜水訓練を行うことが可能。
京都市消防局/京都市中京区押小路通河原町西入榎木町450-2
WINTER 2018/FIRE RESCUE EMS vol.81