昨年、緊急消防援助隊のなかに「土砂・風水害機動支援部隊」があらたに創設されました。ここ近年の多発する風水害に迅速に対応するための緊援隊増強ということで、より具体的かつ専門的な技術訓練への取り組みが注目されています。
このあらたな創設にともない、土砂・風水害現場での救助活動に活用する特殊車両・資機材を計画的に配備し、被災地に機動的に投入できる体制の整備・編成が重要となるわけですが、その編成中核となる特殊車両(水陸両用バギー及び重機)に関する知識・技術を習得するための習熟訓練が、2020年2月20日(木)と21日(金)の2日にわたって消防庁主催、岡山市消防局の協力のもと、実施されました。
約30度の斜面をバギーのフロントウインチを使用して登り降りを行う訓練です。繊細なアクセルワークとウインチ操作の両方が要求されます。角度が急で自走不可能な場所でもウインチを使用すれば可能になります。
スラローム、急旋回、障害物走破、超堤・超壕、狭隘な場所、斜面走行などの実災害で起こりうるさまざまな状況を再現することにより、現場に近い環境で訓練ができます。通常時とはまるで異なる路面状況に対応するための高度なハンドルワークが要求されます。
岡山市消防教育訓練センターは水域に面した場所にあり、その特徴を生かした水上走行訓練実施が可能です。水没した家屋を模して作成したフロート付の小屋を目的設定し、水上でのアクセル操作、ハンドル操作に加えて体重の移動によるバギーの操舵性を理解しながらの水面救助訓練となります。
バギーの走行以外にも基本訓練として、点検要領、トラブルシューティング、トラックシステムの取り扱いを実施しました。また、メーカーの方にもブースを担当してもらうことで、より専門的な知識の習得ができました。
バケット、アタッチメント(フォーク)及び排土板を活用し、障害物を除去して車両の進入経路の確保などを目的に実施された訓練。災害時にはリース車を運用することも想定されるため、今回は実際にリース会社の持つアタッチメントを使用して訓練に臨みました。
埋没した家屋への進入路確保を目的とした状況を実際に作り出し、岩混じりの土砂を安全に効率よくスピーディーに掘削する訓練。掘削時に必要となる基本的な知識と微操作を習得するための訓練も並行して行われました。
発災直後の現場において、道路啓開よりも優先して救出現場へ向かうにためには高い走行突破技術が必要となります。段差乗り越え、丸太乗り越え、片輪走行などの技術を駆使し、安全に悪路を走行突破することを目的に実施されました。
重機が不安定になりやすい登り坂と下り坂の走行技術取得を目的に実施されました。災害現場では土砂以外にガレ場やコンクリートなどさまざまな路面状況が想定されます。今回の訓練ではガレスロープを使用し、土砂よりもより不安定な状況下を作り出し、繰り返し挑みました。
~訓練を終えて~ 岡山市消防局 ご担当者よりメッセージ
今回の訓練は、近年多発している土砂風水害に対する市民の不安と、特殊車両の習熟に課題を抱える各消防本部のニーズに応えるものでした。
重機、バギーともに実災害を想定した訓練が実施され、重機については、発災直後の劣悪環境下での応用走行及び道路啓開、バギーについては、斜面走行及び水面走行等の実践的な運用訓練となりました。
また、訓練会場となった施設は、救助隊員自らが整備に着手したもので、緊急消防援助隊災害派遣で岡山市消防局が課題を残した悔しい思いを克服するため、効果的な訓練が実施できるようになっています。この想いが詰まった訓練施設で、全国の隊員に現場で同じ悔しい思いをさせないようにと訓練企画し、運営、指導等を行いました。
今後起こりうる大規模自然災害に立ち向かうため、消防の支援部隊が、この訓練を通してONE TEAMとなり、大きく前へ踏み出せたと感じられる訓練でした。
今回の訓練レポートに協力いただいた
岡山市消防局からのお知らせです