2020.8.31
FIRE REPORT #155 いま、緊急消防援助隊に求められるもの
25年前に起きた阪神・淡路大震災の教訓を糧にし、平成7年6月に創設された全国消防機関相互による援助体制「緊急消防援助隊」は、大規模災害等で被災した都道府県内の消防力のみでは対応が困難な場合に、被災地からの要請等により迅速に出動し、救助活動を展開する。
これまで、東日本大震災をはじめ多くの大規模災害等において、人命救助活動等に多大なる成果を上げてきたが、南海トラフ地震や首都直下地震などの発生が懸念されるなか、その期待はますます高まっている。
「緊急消防援助隊ロゴマーク」について
全国の消防本部から出動する隊員同士が堅く結束し、困難な場面に立ち向かう力強さを表現して作成された「緊急消防援助隊ロゴマーク」。カラビナをモチーフとしたこのデザインは、緊急消防援助隊の登録消防本部・登録道県消防防災航空隊の投票結果より決定された。緊急消防援助隊の部隊・車両において表示するほか、制度をPRする際などに活用することが可能だ。
平成26年8月広島市土砂災害
局地的豪雨や台風による大雨等により、大規模な浸水被害、河川の氾濫、土砂災害、流木被害など多様な被害が生じており、風水害が多発化、大規模化、激甚化。
南海トラフ地震等への対応
平成23年3月東日本大震災
今後発生が危惧される南海トラフ地震や首都直下地震等の甚大な被害が想定される災害において、緊急消防援助隊の活動を大規模かつ迅速に展開できるよう、緊急消防援助隊の登録規模について、令和5年度末(2023年度末)までにおおむね6600隊規模とすることを目標としている。
これらの災害に対応するために必要な特殊車両等のうち、地方公共団体が整備・保有することが費用対効果の面で非効率的な車両等については国が整備し、都道府県または市町村に対して無償で使用させる「無償使用制度」を制定。近年において整備が進められている車両等について、一部紹介する。
高機能救命ボート
配備台数36台※令和2年4月1日現在
瓦礫等がある場面でも活動可能であり、多くの要救助者を一度に救出することや車椅子での移動を必要とする方を車椅子ごと救助することも可能な高機能な救命ボート。
主な特長
- 船底を補強布により保護(瓦礫等がある浸水域での活動が可能)
- 大量救出及び重量物の搬送が可能
- 膨張式(省スペースでの保管・運搬が可能)
乗船定員:20名
ボート寸法 | 全長6,700mm、全幅3,150mm程度 |
収納サイズ | 2,000mm×800mm×800mm程度 |
重量 | 約200kg(船外機除く) |
最大積載量 | 2,000kg |
中型水陸両用
配備台数5台(宮城、千葉、愛知、徳島、熊本)※令和2年4月1日現在
東日本大震災や九州北部豪雨等の教訓を踏まえ、津波や大規模風水害による浸水等の災害現場において迅速かつ的確に救助・救出活動を実施するために配備された中型水陸両用車及び搬送車。令和元年10月、大雨により孤立状態となった千葉県山武市の幼稚園から園児等約60名を救出した(同車両が配備された消防本部管内での活動)。
主な特長
- 船底を補強布により保護(瓦礫等がある浸水域での活動が可能)
- 大量救出及び重量物の搬送が可能
- 膨張式( 省スペースでの保管・運搬が可能)
乗船定員:20名
エンジン | ターボディーゼル(水冷) |
燃料タンク容量 | 72?( 運転時間、約12 時間) |
連続稼働時間 | 約10時間 |
駆動方式 | 8輪駆動キャタピラ |
寸法 | 全長4,877mm、全幅2,388mm、全高2,743mm |
車両総重量 | 3,650㎏ |
最大積載量 | [陸上]1,961㎏[水上]726㎏ |
出力 | 85馬力 |
最高速度 | [陸上]22km/h[水上]5.6km/h |
最大登坂能力 | 40度 |
運転免許 | [陸上]大型特殊自動車[船舶]小型船舶2 級 |
緊急消防援助隊の変遷
緊急消防援助隊の出動実績
災害名 | 活動日数(活動期間) | 延べ活動隊数 | 延べ活動人員数 |
平成16年7月新潟・福島豪雨 | 3日間(平成16年7月13日?7月15日) | 297隊 | 1,207人 |
平成16年7月福井豪雨 | 2日間(平成16年7月18日?7月19日) | 318隊 | 1,358人 |
平成16年台風第23号兵庫県豊岡市水害 | 2日間(平成16年10月21日?10月22日) | 139隊 | 564人 |
平成16年新潟県中越地震 | 10日間(平成16年10月23日?11月1日) | 1,075隊 | 4,333人 |
平成17年JR西日本福知山線列車事故 | 4日間(平成17年4月25日?4月28日) | 74隊 | 270人 |
平成20年岩手・宮城内陸地震 | 6日間(平成20年6月14日?6月19日) | 854隊 | 3,383人 |
平成23年東日本大震災 | 88日間(平成23年3月11日?6月6日) | 31,166隊 | 109,919人 |
平成25年台風第26号による伊豆大島の災害 | 16日間(平成25年10月16日?10月31日) | 479隊 | 2,055人 |
平成26年8月豪雨による広島市土砂災害 | 17日間(平成26年8月20日?9月5日) | 694隊 | 2,634人 |
平成26年御嶽山噴火災害 | 21日間(平成26年9月27日?10月17日) | 1,049隊 | 4,332人 |
平成27年9月関東・東北豪雨 | 8日間(平成27年9月10日?9月17日) | 572隊 | 2,246人 |
平成28年熊本地震 | 14日間(平成28年4月14日?4月27日) | 4,336隊 | 15,613人 |
平成28年台風第10号による災害 | 10日間(平成28年8月31日?9月9日) | 825隊 | 3,238人 |
平成29年7月九州北部豪雨 | 21日間(平成29年7月5日?7月25日) | 3,090隊 | 11,256人 |
平成30年7月豪雨 | 26日間(平成30年7月6日?7月31日) | 3,713隊 | 15,287人 |
平成30年胆振東部地震 | 5日間(平成30年9月6日?9月10日) | 642隊 | 2,632人 |
令和元年8月の前線に伴う大雨 | 4日間(令和元年8月28日?8月31日) | 172隊 | 583人 |
令和元年東日本台風 | 6日間(令和元年10月13日?10月18日) | 809隊 | 2,978人 |
[出動の内訳]地震災害18回、風水害14回、噴火災害3回、 タンク・工場等火災3回、雪崩1回、列車事故1回
※延べ活動人員:日ごとの活動した人員数を累計した数