2020.8.21
消防の歴史を築いた懐かしの消防車両
SPECIAL ISSUE CLASSIC FIRE ENGINE by KYOTO CITY FIRE DEPARTMENT
日本の消防車両は自治体消防発足以降、徐々にその台数やバリエーションが拡充していった。今日では多種多様な消防車両が人々の安全で安心な生活を守っているが、そのラインナップの原型が確立したのも自治体消防発足前後の時期といえる。しかし、消防史に残る当時の車両たちの姿は、今となってはなかなか目にすることはできない。ここでは京都市消防局に配備されていた車両を通し、消防車両の歴史を見ていこう。
山林工作車「京 88 さ 43-68」/ゴムクローラー仕様の資器材搬送車(0331)
「林野出動区分」により、ともに配置される普通ポンプ車の要員が乗り換えて出動する車両で、1980 年3月31日、左京署修学院、右京署御室及び伏見署石田の3 出張所へ配置された。いずれも山林が近く、かつ重要文化財社寺等も建立されている消防警備上重要な地区を担当している。母体となる工作車にはジェットシューター、スコップ、火叩き等とともに、谷川の水を使うための可搬動力ポンプ、吸水管、50ミリメートル径ホース、携行燃料等を積んだゴムクローラー仕様の資器材搬送車を常時積載して待機している。資器材搬送車はスロープを使用して地上へ下ろすようになっていた。1966 年ごろの北消防署第1 分隊員の共同消防器材開発研究発表を端緒にした発展形として実配置にいたった車両である。
資器材搬送車のみの写真は右京署御室出張所配置の(0331)。
電源照明車京都セラミック号「京 88 さ 41-65」(0631)
1979年 日産J-C341改/京成自動車
山科区では南北を結ぶ主要ルート上に鉄道や高速道路によるアンダーパスが数カ所あり、大型の電源照明車では通行に不便があった。そこに地元企業から寄付の申し出があり、京都市消防局が独自に車両開発を行って寄贈者に応えたものである。赤色地に幅広の白色帯は特殊車両を示す塗装。サイレン、スピーカー、小隊名表示は屋根上に配し、伸縮ポールに8 灯の照射球盤を設置している。電源は5キロボルト/アンペア、車体サイズが相当にコンパクト化されたこともあって多用された。
広報車 「京 88 さ 69-97」
1984年 いすゞファーゴ・バン L・W FR11DV改/京都イスズ
市民への火災予防活動をはじめ多用途に使用される車両で、警防課消防係所管でもある。屋根上の看板の標語「みんなできずこう 火事のない明るい京都」や「火事救急は119 番」の文言も今となっては時代を感じさせる。赤色地に白帯の塗装は1950 年代から使われ、市民にもすっかりおなじみとなった。
2020 FIRE RESCUE EMS vol.93
写真・文:宮脇健氏