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2019.9.6

消防ヘルメット
消防ヘルメットコレクション FIRE HELMET COLLECTION

命の絆No.59 アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ニューヨーク市消防局

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命の絆 消防ヘルメット

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THE BOND OF BROTHERHOOD
助けを求める声があるならば、いかに過酷な災害現場であっても身を投じていく消防士たち。

時代や国境を超え、すべての消防人の心にある博愛の精神が、彼らを突き動かせる。隊という名の“家族”が、危険な現場で協力し合い“人命救助”という任務を成し遂げる。

「消防ヘルメット」はそんな彼らの活動を支え、危険から身を守る盾となってくれる。現場には要救助者、仲間、そして己の命をつなぐ博愛の絆があり、その象徴が消防ヘルメットといえるであろう。

 
No.59 アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ニューヨーク市消防局
ケアンズ・アンド・ブラザー社 5A型「ニューヨーカー」レザーヘルメット

 
スタテン・アイランドはマンハッタンから5キロメートル離れた、ニューヨーク湾のアッパー・ベイとロウアー・ベイの間に浮かぶ島。ニューヨーク市を構成する5行政区(ボロー)の1つでもあり、面積は約151平方キロメートル、人口は約47万2千人である。隣接する行政区のブルックリン・ボローとの間には、1964年にヴェラザノ・ナローズ・ブリッジが架橋されてルート278号線が通じているほか、マンハッタンからは無料のフェリーボートが往復し、長きにわたり重要な交通機関となっている。

現在、ニューヨーク市消防局(F.D.N.Y.)はスタテン・アイランド・ボロー・コマンドに第8ディヴィジョン(方面本部といったところ)を置き、この島とブルックリン・ボローの一部を管轄している。スタテン島内にはこのディヴィジョンの下に第21・22・23の3個バタリオン(消防大隊)があり、第79と第151から第168までのエンジン・カンパニーの諸消防隊等を統率、19カ所のファイア・ステーションを設けている。なお、島内には現在もボランティア消防隊が2隊在隊している。

紹介するヘルメットは、第8ディヴィジョンへ担当を引継ぐ前の第10ディヴィジョンの下で活動していた時期の第154エンジン・カンパニのフォーマー・クォーター・キャプテン(複数配置消防車両へ搭乗して指揮するキャプテン職のこと)のものである。

第10ディヴィジョンは1905年10月1日に編成され、1922年4月16日に一旦閉鎖。その後1951年1月3日に新たに再編成され、いずれもスタテン・アイランド・コマンドで活動し、その管轄はスタテン・アイランド及びブルックリン行政区の一部に及んでいた。しかし1990年7月1日にその役を終了して第8ディヴィジョンに委ねたので、今日では第10ディヴィジョンは存在していない。

ヘルメットのフロント・ピースの数字「154」は第154エンジン・カンパニーを示すものである。第154エンジン・カンパニーは1905年にボランティア消防E-204(エンジン204ポンプ車隊)として発足し、1913年にE-154(エンジン154)としてニューヨーク市消防局のポンプ車隊となった歴史ある隊である。不況による予算削減のため1975年に閉鎖されたものの、1981年7月2日に第22バタリオン傘下で再び編成されて活動を開始。車種の異なる複数の消防車両が配置されたことで、キャプテン職の職名はFORMERQUARTER CAPTAINとなり、さらに隊名もFQ154となった。複数配置の消防車両はE-154(エジン154ポンプ車)、FU-145(フォーム・ユニット145、化学泡消防車ほか)、BFU-4(ブラシ・ファイア・ユニット4、林野火災対応車ほか)、154-ATV(アタック・ヴィークル154、先行救助活動車)及びMARC-154(マリーン・コ・オペレーション154、消防艇との協同活動車)であった。

2018年7月31日、第154エンジン・カンパニーはその役割を次の活動隊に譲った。それがスタテン・アイランド初のスクワッド8で、第8ディヴィジョン下で救助専任機動隊の性格を持つものである。島内にはほかに第21バタリオンに所属するレスキュー5がコラプス・レスキューとして配置されており、これを補完強化する態勢となった。

ヘルメットはケアンズ・アンド・ブラザー社のモデル5A型「ニューヨーカー」で、1957年から1958年にかけて手造りされたグレイン皮革の、通称「レザー・ヘルメット」である。同社ではヘルメット帽体内中心部にアルミニウム製の円形のメダリオン(メーカーズプレート)を取り付けていて、その中の記号Fから製造年が判別できる。製品のロット番号は72566、サイズは6-7/8インチ(Mサイズに該当)だ。

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ニュージャージー州のクリフトンにあったケアンズ・アンド・ブラザー社の大元の前身は、1740年に主に保険会社の消防隊用ストーブパイプ型帽を作っていたヤコブス・ターク氏で、1836年に事業を引継いだヘンリー・T・ゲータキャップ氏を経由して1869年にジャスパー及びヘンリー・ケアンズ兄弟へと渡ったものである。ケアンズ兄弟は当初ニューヨークでレザー・キャップを作っていたが、やがてデザインを一新してレザー・ファイア・ヘルメットへと進化させた。その代表的なものがニューヨーク市消防局が採用したモデル5A型ヘルメットの「ニューヨーカー」である。帽体の頭部周囲はブラス製の枠で形態が固定され、全体に黒い塗料を吹き付けてある頑丈なもので丈なもので、防水性も高い。庇表面につる草模様が浮彫りされ、帽体正面のフロントピースは盾形の白色地。ここに赤地の長方形をくり抜いた「154」の数字が示され、その下方の枠内に記された「CAPTAIN」の黒文字とあわせて第154エンジン・カンパニー・キャプテンの標識となる。フロントピースと帽体頂部を結ぶ板金はブラス製で、両面に赤くフローリアヌス・クロスがタンポ印刷され、横から見るとフロントピース上端を鷲がくちばしで咥えていように見えるのも特徴である。さらにフロントピースは帽体に6本のブラス製のピンでも固定される。ハンモックはライナー兼用で黄色の不燃繊維でしつらえてあり、中央部を紐で絞り込んで頭部サイズに合わせる方式。前額部は皮革張りで、耳覆い兼用頸部保護のネックフラップは表面は淡褐色、裏面は赤色のフランネル地だ。

ヘルメットの庇前面に取り付けてあるのはボーク・アイ・シールドで、透明の合成樹脂製。庇後部表面には白地の角丸長方形に黒文字で「10」とあり、第10ディヴィジョン組織下の隊であることを示している。また、庇の最後部にはヘルメット吊り下げ用のDリングが付く。重量は1,150グラムでずっしりとした重量感があり、仕様変更があった新型のN5A型が存在する現在でも人気ナンバー1のヘルメットである。

ほぼ新品のこのニューヨーカー・ヘルメットは、スタテン・アイランドのパシフィック・アベニュー在住のニューヨーク市消防局のルテナン(消防司令補)アンドリュー J.ババジコ氏から1990年11月7日に贈られた逸品である。アンドリュー J. ババジコ氏はブルックリン・ボロー・コマンドの下にある第201エンジン・カンパニーでE-201(エンジン201)とともに在隊しているL-14(ラダー114、現在はTL-114タワーラダー114に替わっている)のメンバーである。

後年の2001年9月11日、ハイジャック機によるマンハッタンのワールドトレードセンター2棟へのテロ攻撃に際し、出場した多数のニューヨーク市消防局のメンバーのうち343人が崩落の下敷きとなり殉職した。スタテン・アイランド・コマンドのメンバーも現場へ駆け付けるなかで、第154エンジン・カンパニーのオキーフ・ウィリアム・キャプテン、第152エンジン・カンパニーのコーティス・ロバート・ファイア・ファイターも第8ディヴィジョン所属隊として活動中に巻き込まれて殉職した。このヘルメットとの深い縁を感じつつ、冥福を祈るばかりである。

PROLOGUE 災害現場で活動する隊員たちの姿で、ひときわ目を引く存在が「ヘルメット」である。
特徴的なデザインにはさまざまな機能が秘められており、頭部保護という同じ目的を持ちながら国によっていろいろなパターンを見ることができる。
そもそもヘルメットは軍事用として誕生し、古くから頭部に直接加えられる打撃力を減少し、直接的な負傷を防ぐことに重きがおかれてきた。後に用途ごとに進化を続け、使用される環境によって求められる性能やそれに伴う形状や素材の変化を見せてきた。
消防で用いるヘルメットも、“災害”という敵から“消防士”という戦士を守るための“防具”であるといえる。

災害現場という場所は何が起こるかわからない。
突如、倒壊物が襲い掛かってきたり、足場が崩れて転落する可能性も大きいわけだ。頭部に大きなダメージが加われば命に関わる結果となり、脳に障害を与える危険もある。災害現場であれば頭を打って意識を失っている間に要救助者の生命は危険に曝され、隊員自身も更なる悲劇に見舞われないとも限らない。
つまり、消防におけるヘルメットとは隊員はもとより、要救助者や仲間の命を結ぶ重要な存在であるといえる。ここでは世界の消防が使用する「消防ヘルメット」にスポットをあて、郷土を災害から守ってきた消防士たちの魂を伝えていく。



09|10 2019/FIRE RESCUE EMS vol.87

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