2023.3.30
命の絆No.79 アメリカ合衆国 カリフォルニア州 ロスアンジェルス市消防局 旧サウスディビジョン 第2バタリオン・チーフ
命の絆 消防ヘルメット
助けを求める声があるならば、いかに過酷な災害現場であっても身を投じていく消防士たち。
時代や国境を超え、すべての消防人の心にある博愛の精神が彼らを突き動かす。隊という名の“家族”が、危険な現場で協力し合い“人命救助”という任務を成し遂げる。
「消防ヘルメット」はそんな彼らの活動を支え、危険から身を守る盾となってくれる。現場には要救助者、仲間、そして己の命をつなぐ博愛の絆があり、その象徴が消防ヘルメットといえるであろう。
命の絆No.79 アメリカ合衆国 カリフォルニア州 ロスアンジェルス市消防局
旧サウスディビジョン 第2バタリオン・チーフ
MSA 社ポリカーボネート製 トップガードヘルメット
アメリカ合衆国消防のなかでも第2位の規模を誇るロスアンジェルス市消防局は、消防要員3,600名、事務スタッフ122名で構成され、140両のポンプ車、43両のはしご車、154両のレスキュー・アンビュランス車(救急車両、内訳はALS94両、BLS54両及び高度プロバイダー6両)、6両のアーバンサーチ・アンド・レスキュー車(救助隊)、1両のヘビーデューティ・レスキュー車(レッカー車)、12両のブラッシ火災用車、9両の空港用クラッシュテンダー車、6機のヘリコプター、5隻の消防艇などを保有し、14個大隊(バタリオン)で消防警備する管轄区域は1,220平方キロメートル、4ビューロー管区だ。
2015年1月までは市内をノース・ディビジョンとサウス・ディビジョンの2管区に分けて対応していた。このうち第2大隊(バタリオン2)はサウス・ディビジョンの市内中心部を管轄し、イースト・ヨーク・ブールバード4455番地の第55ファイア・ステーションにエンジン55、レスキュー・アンビュランス55とともに在隊していた。第2大隊が当時統括指揮していた8カ所のファイア・ステーションは右の表のとおりであるが、現在はセントラル・ビューローと名称が変わり23のファイア・ステーションの各隊を指揮している。
紹介するヘルメットは2015年1月まで使われていたMSA(マイン・セーフティ・アソシエーション)社のポリカーボネート製ヘルメット「トップガード」だ。白色帽体正面にはロスアンジェルス市消防局のエンブレムを形どったフロントピースを立て、上部には赤地に黄色の文字で「BATT CHIEF」と弓形に記されている。中央部には交差した消防トランペットと二重の炎がデザインされたバタリオン・チーフ章、下部には赤地に黄色の文字で「LAFD」と記され、4カ所が樹脂ネジで固定されている。帽体内ライナーは軟質合成樹脂、十文字状のハンモックは新素材繊維とシンプルさが際立ち、あご紐は皮革製。軽やかさと曲面の美しさが調和した傑作ヘルメットである。
この新品ヘルメットは1983年10月14日に、ロスアンジェルス市消防局第2バタリオン・チーフであったポール・G・ブラム(Paul G Brumm)氏から「LAFDからの記念にどうぞ」というコメントとともに贈られた。
リンカーン・ハイツ地区の 第1ステーション |
エンジン1、トラック1、 レスキュー・アンビュランス1及び801 |
ハイランド・パーク地区の 第12ステーション |
エンジン12及び212、 トラック12及びレスキュー・アンビュランス12 |
サウス・エル・セレノ地区の 第16ステーション |
エンジン16及びレスキュー・アンビュランス16 |
イーグル・ロック地区の 第42ステーション |
エンジン42 |
キプレス・パーク地区の 第44ステーション |
エンジン44、エンジン443、レスキュー・アンビュランス43及び44、ブラッシ・パトロール44、 スイフト・ウォーター・レスキュー消防艇及び死傷者収容ポイントトレーラー車 |
エル・セレノ地区の 第47ステーション |
エンジン47及び447、 レスキュー・アンビュランス47及び ブラッシ・パトロール47 |
アット・ウォーター・ヴィレッジ地区の 第50ステーション |
エンジン250及び450、トラック50、 レスキュー・アンビュランス850 |
イーグル・ロック地区 イースト・ヨーク・ブールバード 4455番地の第55ファイア・ステーション |
本文のとおり |
戦闘用の兜をルーツに持つヘルメットの目的は、衝撃から頭部を守り、直接的な負傷を防ぐことにあるが、国によりさまざまな特色を見せ、性能やそれにともなう形状、デザイン、用いられる素材は時代や環境とともに進化を遂げ続けている。消防で用いるヘルメットも、“災害”という敵から“消防士”という戦士を守るための“防具”であるといえる。
消防におけるヘルメットとは、要救助者や仲間の命を結ぶ重要な存在である。災害現場では突如倒壊物が襲い掛かってきたり、足場の崩れ、転落の危険に晒される。もし頭を打ち意識を失えば、要救助者の生命は守れない。隊員自身もさらなる悲劇に見舞われないとも限らない。消防ヘルメット一つひとつにはストーリーが宿っている。世界の消防が使用した「ヘルメット」から、郷土を災害から守ってきた消防士たちの魂を伝えていく。
春季号 2023/FIRE RESCUE EMS vol.107