2016.4.12
FIRE REPORT #136 パリ消防局 PART1
PART1
パリ同時多発テロにおける救急対応
Brigade des sapeurs-pompiers de Paris
今号と次号で紹介する「パリ消防局」。パート1では2015年に発生したテロにおける救急対応を、パート2ではパリ消防局の隊員や車両を掲載します。
日本では「パリ市消防局」と訳されることもあるがあくまでフランス陸軍に所属する消防工兵部隊。有事の際は国防省の指揮下に入るが平時は内務省とパリ警視総監の指揮を受け、フランス国家憲兵隊と同様の立場にある。
これまでになかった恐怖と深い悲しみがパリを襲う
2015年11月13日金曜日、週末を過ごす客でにぎわうフランスの首都パリ(Paris)市内外で午後9時20分から53分の間に爆破テロや銃撃による殺戮が発生し、少なくとも130人が死亡、300人以上が負傷し、同国で戦後最悪のテロとなった。11月16日、フランスのオランド(Francois Hollande)大統領は、「今回の過激派組織IS=イスラミックステートによる不特定多数を殺傷する組織的なテロは、シリアで計画、ベルギーで準備、フランスで実行された」と明らかにした。今回のテロは、週末の夜の繁華街という都市の脆弱なところを狙い、不特定多数の人々に対して発砲。実行犯の大半が持参の自動小銃の弾を撃ち尽くしたのち、身につけた爆弾ベルトにより自爆死し、その爆発でさらに殺傷するスタイルのテロであった。
日本における119番に相当する救急専用の電話番号15番に掛かってきた通報を処理し、適切にトリアージする役割を負う救急医療の中枢組織である。医学知識のあるオペレータが受信し、医師もコールセンターに常駐していて、トリアージ(救急車の必要性を判断)する。通報受信時から、すべて医師による判断が行われるためか、救急搬送が必要と判断されるケースはわずか10%しかない。基本的には県に1か所のみ設置されている。なお、火災や交通事故、救助事案などは、消防組織に繋がる電話番号18番に掛ける。
公立または私立病院の救急部門に所属しており、SAMUからの要請を受け現場へ向かい処置を行う実動部隊である。医師が救急車に同乗し、患者と接触と同時に医療行為が開始される。同時に医師が患者にとって一番ふさわしい病院を探す。コールセンターでは、パリ市内の病院の空床状況、専門医の勤務状況をリアルタイムで把握している。したがって「たらい回し」はおこらない。
パリ同時多発テロの病院前緊急対応のマップ
日本の現状と課題
河野国家公安委員長は、過激派組織IS=イスラミックステートなどによる国内でのテロの危険性について、「危険性はあると思っていて、国内でも、ISと連絡を取っていると公言している人物やISに忠誠を誓っていると思われる人物が存在している。警察もしっかりとモニタリングをしているので、テロにつながらないよう厳しく取り組んでいきたい」と述べた。日本国内でも、大学生がISに戦闘員として加わるためにシリアへの渡航を計画していたほか、インターネット上でISを支持する内容や、ISの関係者を名乗る人物とやり取りをしている書き込みが相次いで見つかっている。警察庁は、インターネット上でテロに関する情報を自動監視するシステムの整備など、テロを未然に防ぐ対策の強化を急いでおり、もし、今回のような大規模な同時多発テロが起きた場合、消防や救急、病院が、どのように対応するか、すでに準備や訓練は出来ているかが大きな課題となっている。
それでもパリは、憎悪と恐怖に屈しない
FIRE REPORT ♯136を、20枚のスライドギャラリーにまとめました。
下部バーをクリックしてご覧ください。
Text by 一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事 サニー 神谷
(日本防災教育訓練センターへのリンクはこちら)
Photos by Getty Images/AP