2018.1.15
FIRE REPORT #145 地域密着型の消防活動と地域特性にあわせた訓練
国内外に高い知名度を誇る京都市は、毎年5千5百万人以上が訪れる一大観光都市。かつて幾度となく大火を経験してきた歴史があり、それが市民の高い防災意識となって現在にも受け継がれる。
その京の都を守る京都市消防局は、消防署11、分署1、出張所36、消防車両337台、消防ヘリ2機の体制(平成29年4月1日現在)を持つ大規模な消防組織であり、あらゆる災害に的確果敢に立ち向かう「力強い消防」と、市民とともに取り組む「地域密着型の消防」で、「安心都市・京都」の実現をめざす。昭和30年代に火災件数が増加したことからさまざまな防火対策を推進し、現在の出火率は政令市のなかでももっとも低く(平成28年)なっている。実際に署員が管轄区を歩き、路地ごとに車両の進入可否等をチェックしてマーキングした地図を全体で共有するなど、日々の地道な努力をたゆみなく継続。また、市民の消防への理解や防災意識の向上をはじめ、さまざまな防火・防災への発展をめざし、WebサイトやSNS等を活用して細かな情報まで積極的に公開していく広報方針で取り組んでいる。
平成25年台風18号による水害
平成25年9月16日に本州に上陸した台風18号の影響で京都府内は記録的な大雨となり、全国で初めてとなる「大雨特別警報」が発表されるなか、京都市内でも桂川、鴨川、高野川、宇治川などの水位が次々と氾濫危険水位を超えた。被害は浸水1,435件、土砂崩れ等209カ所に及び、京都市消防局は第3号水災警防態勢を発令し全職員で対応にあたった。
地域特性にあわせた訓練を実施
京都市内には火災が発生すると延焼が懸念される木造建物密集地域が多く、貴重な文化財も多数存在する。こうした地域特性にあわせるとともに、他県での大規模火災の事例も教訓とした上で独自の訓練を工夫し実施。特殊な設備が必要となる訓練は主に消防活動総合センターで行われ、事前の告知によって見学者も受け入れている。また、文化財社寺における火災に備え、地域住民と消防、社寺関係者と連携を強化し、文化財を火災等の災害から守るため、独自の取り組みである「文化財市民レスキュー体制」を構築している。
下の写真は自衛消防隊、文化財防災マイスター(防災の研修を受講した観光ガイド等)などが参加した文化財防火運動中の醍醐寺における消防訓練。貴重な文化財を後世に伝えるため、文化財愛護の精神のもと、文化財の防火・防災を積極的に進めている。
木造建物密集地域を再現した訓練
強風下における街区火災を想定した訓練
救急体制のさらなる充実へ
全国的に119番通報から救急車の現場到着までの時間が延びる傾向にあるのに対し、京都市消防局の平成28年における平均時間は6分19秒(平成27年の全国平均は8分36秒)。この数字は過去10年間で最短であり、出動件数が7年連続で増加しているなかでの記録更新は特筆される。詳細な分析に基づく救急隊の効率的な増隊や指令システムの更新、市内における災害状況にあわせたリアルタイムでの部隊運用が効果を発揮している。
消防指令センター
消防指令センターでは、災害現場から直近の適切な部隊を出動させる自動出動指定装置を運用し、受信から出動までの時間短縮を図っている。また、消防車や救急車の位置や活動状況をリアルタイムに管理できる消防車両動態管理システムを活用し、出動で一時的に部隊が不足したエリアに別の隊を随時配置転換している。
特別救急訓練
京都市立病院消防出張所
高度救急救護車
局地的に多数の傷病者が発生した場合に現場にて応急救護拠点となる高度救急救護車は、車両両側を拡幅すれば室内面積が最大約33㎡に広がり、6床のベッドが設置できる。医師と連携して車内でトリアージや医療行為が可能であり、現場で複数の傷病者への迅速な救命活動が実現する。運用する出張所は市立病院と同一敷地内にあるため、医師の要請や同乗しての現場出動もスムーズである。
全国の消防救助隊員が一同に会し、競い、学ぶ「レスキューの甲子園」、全国消防救助技術大会。京都市で開催されるその第47回大会の公式キャラクターと大会スローガンが決定した。
公式キャラクターは京都市消防局特別高度救助隊員の設定。幅広い層の市民に好感を与えるタッチのイラストで表現され、オレンジの救助服姿で大会をアピールする。また、大会スローガンには、使命感を持ち1秒でも早く要救助者の元へ駆けつける消防救助隊員の熱い志が込められている。
京都市消防局/京都市中京区押小路通河原町西入榎木町450-2
WINTER 2018/FIRE RESCUE EMS vol.80