2018.7.2
FIRE REPORT #148 水難、山岳、交通等のあらゆる救助種別に対応
増加する救助事案に的確に対応
京都市消防局の救助隊
京都市消防局の救助隊体制は、専任救助隊6隊に加え、消防隊との兼任救助隊が6隊、そして本部直轄の特別高度救助隊が1隊。各隊は市内各地に均等に配置され、いつどこで発生するかわからない災害に対し、早期に現場活動に着手すべく即応体制をとっている。全隊が水難、山岳、交通等のあらゆる救助種別に対応できる装備及び能力を備えることが特徴であり、その維持のために局本部のマネジメント下で訓練を企画立案、指導。活動で得られた教訓や課題に対しては災害事例速報という形で全隊に周知し、救助隊の現場活動能力の標準化を図っている。
2016年の熊本地震の災害現場に緊急消防援助隊として派遣され活動中の京都市消防局の救助隊員
本部特別高度救助隊(スーパーレスキュー)
震災等の大規模災害やNBC災害等の特殊災害に対応できる高度な装備資機材や特殊な車両を備えた特別高度救助隊は、全国の政令指定都市に設置が義務付けられており、京都市消防局の場合は京都市消防活動総合センターに配置。その装備を生かした災害対応や指揮支援活動以外に、救助活動のマニュアル作成や現場活動後の検証、周知を通じ、救助隊全体の能力向上と標準化も重要な任務の一つとして取り組んでいる。
NBC災害に対応する特殊災害対策車(写真上)は車内に陽圧の分析室を持つ。イスラエル製のHEPAフィルター(写真下左)によって空気環境が担保され、外気に触れることなく有害物質の同定作業などを行う。車内にはほかに化学防護服(写真下中)や除染用テント等の装備が備えられている。HAPSITE化学物質分析器(写真下右)は、待機時にも外部電源で常に通電状態とし、現場で速やかに物質の特定ができるようにしている。
トンネル火災等において煙や熱気排除を行う大型ブロアー装置が搭載された特別高度工作車(写真上)。可搬式ブロアー(写真下左)は加圧排煙戦術にも用いられる。JR福知山線の脱線事故の際、現場に可燃性蒸気があり通常のエンジンカッターが使用できなかった教訓から導入されたウォーターカッター(写真下中・右)は研磨剤の混じった水を高圧で吹き付けることで火花を発生させることなく鉄板等の切断を行う。
大規模災害、特殊災害時に現場指揮本部等として運用する災害現場指揮支援車。車内に各種通信機器や情報機器を備え、ヘリコプターからのリアルタイム映像を含めたさまざまな災害情報を集約し、拡幅した車内で関係機関との協議や調整、指揮が可能。
航空機を用いた輸送を前提として作られた大規模震災用高度救助車は、発電機と電気利用機材を搭載した「ER」、エアコンプレッサーと圧縮空気利用機材を搭載した「AR」の2台1組で運用される。
人間が発する二酸化炭素やアンモニアを検知する二酸化炭素探査装置。震災時等、がれきに埋もれた要救助者を検索する際に用いられる。
先端のアタッチメントを交換することにより多用途に利用が可能な多目的ローダー。現場へは専用コンテナを積んだ車両で運ばれる。
開口部直近に要救助者がいない場合に大インパクトで素早くコンクリートを開口する(ダーティーブリーチング)際に使われるビーガン。
山ノ下特別救助隊
山ノ下特別救助隊に4月に配備されたばかりの新しい救助工作車Ⅱ型。通常の救助工作車と異なり車体後部にポンプを装備し、水利に部署して火災対応も可能となっている。京都市消防局の救助隊は出張所に配置されており、直近の火災にも出動する。従来は水槽車等で対応にあたっていたが、ポンプ装備の新しい救助工作車導入により、乗り替えなしで救助と火災にフレキシブルに対応できるようになった。
ホースカーの奥にポンプの配管部が見える。配管は後方に集中配置とし、省スペース化を図りながら左右への取り回しを可能とした。右側には水難救助用ボートの船外機を積載。ボート本体は車体前方のルーフ上に積まれる。
ウインチのワイヤー収納ドラムを車体後方下部に移すことにより、車体前方の張り出しがコンパクトに。京都市内に多い狭隘路への進入がより容易になった。
消防庁によるガイドライン見直しによって同じく4月から運用が開始された新型防火帽。厳しいEN規格にも準拠している。帽体としころの色の組み合わせが、指揮隊、消防隊、専任救助隊、特別高度救助隊でそれぞれ異なる。
京都市消防航空隊
京都市消防局に航空隊が発足したのは1972年。その後、運用機を更新しながら現在は2機のヘリコプターを保有し、救助や救急、林野火災等の災害活動で大きな成果を上げてきた。2011年9月からは西日本で初めて消防ヘリコプターの24時間運行を開始し、その機動性やスピードを生かした災害対応の実施によって、京都市の安心安全を空から守り続けている。また、大規模災害発生時には緊急消防援助隊として派遣され、東日本大震災時にも被災地でさまざまな活動を行なった。
2013年に世界に先駆けて導入されたヘリサットシステム(写真右)は、ヘリコプターから撮影した映像を直接、通信衛星を経由して伝送する最新鋭の装備。従来システムと異なり、どの被災地からでも空撮映像をリアルタイムで伝送できる。総理大臣官邸や内閣府、消防庁等、日本全国の防災関係機関への一斉映像伝送や双方向通信が可能であり、迅速かつ的確な災害対応に貢献するシステムである。
紫明高度救助隊
京都市消防局では本部特別高度救助隊以外にも、震災等の大規模災害への対応能力を備えた高度救助隊を配置している。それが紫明消防出張所の配置部隊である紫明高度救助隊で、大規模災害に対応できる装備資機材を積載した大型救助工作車、救助工作車Ⅱ型、800Lの水を積載し火災対応に用いられる小型水槽車を運用。大型救助工作車にはクレーンが装備され、左右には高度な救助用資機材が効率よく積載されている。なお、紫明高度救助隊と山ノ下特別救助隊の第1部の隊員は、今年度の全国消防救助技術大会陸上の部「障害突破」出場に向けて、ハードな勤務の合間を縫いながら気合の入った訓練に励んでいる。
音響センサー及び振動センサーにより、地中の生存者の音を探査する地中音響探知機。
赤外線画像を表示するFLIRは要救助者の検索だけでなく、残火の確認にも用いられる。
CCDカメラにより、閉所の内部状況を映像にて確認できる簡易画像探索機。
救助活動中に初期微動を検知することで二次災害防止に役立てる地震警報器。
京都市消防局/京都市中京区押小路通河原町西入榎木町450-2
SUMMER 2018/FIRE RESCUE EMS vol.82