2018.4.4
消防・警察・自衛隊・消防団・DMAT・地域住民参加型総合防災訓練を京都刑務所で実施
●実施日/平成30年3月9日
●会場/京都刑務所
全国的にもまだ実施件数は僅かな「刑務所」主催の地域参加型防災訓練
平成30年3月9日、京都市山科区の京都刑務所で総合防災訓練が行われた。刑務所を会場とした総合防災訓練はまだ全国的にも実施数は少ないが、従来、地域防災と無関係と思われていた矯正施設が地域の防災対策上、有用であるという認識は熊本地震発生時の支援対応などを通じて徐々に広まりつつある。
2回目の実施となるこの度の京都刑務所総合防災訓練には、京都刑務所刑務官70名、京都市消防局山科消防署消防隊20名/車両4台、京都府警広域緊急援助隊14名/車両3台、陸上自衛隊中部方面後方支援隊2名/車両1台、DMAT(京都第一赤十字病院)5名/車両1台、山科消防団7名、地域住民約110名が参加した。
なぜ「刑務所」が防災体制として優れているのか
京都刑務所の概要としては現在収容数約1,100名に加え、定員約1,400名まで収容可能。施設内にはその人数の非常食やペットボトル飲料をおおむね10日分を備蓄し、生活水は平常時から地下水を使用している。また、停電時にも電気を確保できる非常用電源、災害用移動炊飯器を複数台持ち、災害時の炊き出しにも対応できる。また、消防用小型動力ポンプも複数台備えていることも心強い。
それぞれのプロフェッショナルが見せた真剣な取り組み
2016年の熊本地震発生時、地域住民が熊本刑務所に自発的に避難するという事象が起きた。防災協定等を結んでいない熊本刑務所はこのとき、人道的判断において武道場を即座に避難所として開放した。
「山科で災害が起きたら、どうか京都刑務所も熊本刑務所と同じように私たちを助けてください」。同年、京都刑務所に届いた住民からの一通の手紙に強く打たれ、京都刑務所もまた災害に対する姿勢の意識を強くした(平成24年に京都刑務所は京都市より大規模災害避難所に指定)。地域との信頼関係、そして関係機関との連携。平時からそれぞれが認め合い、お互いの長所を発揮し合う訓練をしておけば、災害時にそれは必ず生きる。そうした信条のもと、この度の総合防災訓練は実施された。
地域と、そして各機関と連携した総合防災訓練がもたらしたもの
これまで矯正施設の災害対処能力について、あまり理解はされていない現状があった。しかし、前回、今回ともに地域住民からの意見は非常に好評で、今後も同種の訓練を継続してほしいとの意見が多く寄せられた。そして、関係機関からは訓練を通じて矯正施設や刑務官の災害対処能力について予想以上の理解を得ることができた。
刑務官という公正公平に徹した集団処遇のプロによる避難所運営。消防、警察、自衛隊による特殊機動能力による災害救助対処。限られた医療資器材で迅速な対応を求められる災害派遣医療チーム。それらを繋ぎながら住民の一番近くで現場を支える消防団、自主防災の取り組み。災害リスクと向き合い地域社会の発展をめざそうとする者同士が連携し、その絆をより強くした訓練となった。
矯正施設…刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等のすべての施設のこと。
刑事施設…刑務所(少年刑務所を含む)と拘置所のみをさす。