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2015.9.1

消防ヘルメット
消防ヘルメットコレクション FIRE HELMET COLLECTION

命の絆No.42 スイス バーゼル -シュタット カントン消防

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命の絆 消防ヘルメット

THE BOND OF BROTHERHOOD
助けを求める声があるならば、いかに過酷な災害現場であっても身を投じていく消防士たち。時代や国境を超え、すべての消防人の心にある博愛の精神が、彼らを突き動かせる。隊という名の“家族”が、危険な現場で協力し合い“人命救助”という任務を成し遂げる。「消防ヘルメット」はそんな彼らの活動を支え、危険から身を守る盾となってくれる。現場には要救助者、仲間、そして己の命をつなぐ博愛の絆があり、その象徴が消防ヘルメットといえるであろう。

消防ヘルメット

スイス バーゼル-シュタット カントン消防 メタル製M-18-63ヘルメット

バーゼル市はスイス北部に位置し、フランス及びドイツ国境に近いスイス第二の規模の近代都市で国際的にも高名である。スイスは1815年から永世中立国で、国民皆兵制をとっていることでも知られている。消防ヘルメットに関しては、スイス陸軍が第一次世界大戦が終結した1918年に作り出したタイプを流用し、1970年代初頭まで採用していた。ベースが軍事用であるだけに、メタル製の防弾効果が高い仕様となっており、独特の両耳を覆う帽体デザインが特徴。第二次世界大戦の終結以降もこのモデルが多用されていたが、さすがに重量が重いため軽量化することとなり、西ドイツのメーカーへ合成樹脂製の同じ形状をしたヘルメットの生産依頼したこともあった。しかし、軍事用としての用途は省くことができないとの考えで、塗色をダークブルーなどの暗色にして迷彩効果を確保していた。日本で目にすることができるスイス各カントンのアンティーク消防ヘルメットはどれも同じ形で、多くが黒塗りであるのはそのためだ。

そうした中で、今回紹介するヘルメットは珍しく、表面が磨き上げられた白銀に輝くステンレスメタルのままという逸品だ。これは1946年から1970年まで実際に採用されていたM-18-63型。帽体正面にはバーゼル-シュタット カントンの紋章デザインを金属プレートに焼き付けた前章が掲げられている。頭頂部から後背部にかけてのコム(緩衝突起)は別パーツとなっており、暗闇でも光る蓄光塗料が施されているのも特徴だ。後部には首頚部を守るために革製のしころが備えられており、帽体内のライナーも革製で仕上げている。このヘルメットは軽量化以前の仕様であり、重量が1350グラムもある。日本人が着用すると、たちまち首への荷重が苦痛となるだろうが、スイスの消防士たちにとっては中世の騎士時代を踏襲したデザインや重さといえるかもしれない。

このバーゼル-シュタットカントン消防のヘルメットを贈ってくれたのは、ヴィジティング・ファイアマン・ディレクトリーを通して交流していた、ウォルター・ミューラー氏。同氏は山間部にあるウィッチ・トラッハという街でボランティア消防隊員として活躍していた。私は家族旅行で同氏を訪ねホームステイさせていただいた。当時日本ではあまり知られていなかったチーズフォンデュや、山岳ハイキングなどで歓待していただいた。この美しいヘルメットを見ると、懐かしく嬉しい思い出が、昨日のことのように思い出される。

PROLOGUE 災害現場で活動する隊員たちの姿で、ひときわ目を引く存在が「ヘルメット」である。特徴的なデザインには様々な機能が秘められており、頭部保護という同じ目的を持ちながら国によっていろいろなパターンを見ることができる。そもそもヘルメットは軍事用として誕生し、古くから頭部に直接加えられる打撃力を減少し、直接的な負傷を防ぐことに重きがおかれてきた。後に用途ごとに進化を続け、使用される環境によって求められる性能やそれに伴う形状や素材の変化を見せてきた。消防で用いるヘルメットも、“災害”という敵から“消防士”という戦士を守るための“防具”であるといえる。  
災害現場という場所は何が起こるかわからない。突如、倒壊物が襲い掛かってきたり、足場が崩れて転落する可能性も大きいわけだ。頭部に大きなダメージが加われば命に関わる結果となり、脳に障害を与える危険もある。災害現場であれば頭を打って意識を失っている間に要救助者の生命は危険に曝され、隊員自身も更なる悲劇に見舞われないとも限らない。つまり、消防におけるヘルメットとは隊員はもとより、要救助者や仲間の命を結ぶ重要な存在であるといえる。ここでは世界の消防が使用する「消防ヘルメット」にスポットをあて、郷土を災害から守ってきた消防士たちの魂を伝えていく。

SUMMER 2015/FIRE RESCUE EMS vol.70
 

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