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2015.9.25

消防ヘルメット
消防ヘルメットコレクション FIRE HELMET COLLECTION

命の絆No.43 アメリカ・ワシントンD.C.消防

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命の絆 消防ヘルメット

THE BOND OF BROTHERHOOD
助けを求める声があるならば、いかに過酷な災害現場であっても身を投じていく消防士たち。時代や国境を超え、すべての消防人の心にある博愛の精神が、彼らを突き動かせる。隊という名の“家族”が、危険な現場で協力し合い“人命救助”という任務を成し遂げる。「消防ヘルメット」はそんな彼らの活動を支え、危険から身を守る盾となってくれる。現場には要救助者、仲間、そして己の命をつなぐ博愛の絆があり、その象徴が消防ヘルメットといえるであろう。

消防ヘルメット

アメリカ・ワシントンD.C.消防 ケアンズ・アンド・ブラザー社 センチュリー型FRP製ヘルメット

アメリカ合衆国の東部、メリーランド州とヴァージニア州に挟まれたポトマック川河畔に位置するのが首都であるワシントンD.C.。「D.C.」は District of Columbia(ディストリクト・オブ・コロンビア)の略で、連邦直轄地でいずれの州にも属さず、正式には「コロンビア特別区」と呼ばれる。人口は約60万1千人余、面積は177平方キロメートルと比較的小さいが、アメリカ合衆国三権機関である大統領官邸「ホワイトハウス」、連邦議会議事堂、連邦最高裁判所など、連邦機関が置かれている。2001年9月11日に発生した米国同時多発テロでは、午前9時43分にワシントン・ダレス国際空港を発ったロサンゼルス行きアメリカン航空77便がテロリストにハイジャックされ、ワシントンD.C.郊外、ポトマック川を越えたバージニア州アーリントンにある国防総省(ペンタゴン)へ突入し、爆発炎上した。この時、ユナイテッド航空93便もハイジャックされ、ワシントンD.C.にあるホワイトハウスか連邦議会議事堂を標的としていたが、同機はペンシルベニア州シャンクスヴィル近くで墜落。ニューヨーク市のWTCビル2棟への攻撃なども発生し、大惨事となったことは忘れられない。

ワシントンD.C.消防は、職員数2103名、ポンプ車33台、ティラートラック(連結トレーラー型はしご車)15台、プラットフォームラダー(バスケット付梯子車)1台、レスキュー車3台、ハズマット車2台、林野火災対応車1台、救急車24台、高規格救急車27台、空気ボンベ補給兼照明車1台、消防艇1隻を擁し、署は33ヶ所に及んでいる。歴史も古く、いくつかの消防保険会社を統合して公的な機関へと1871年9月23日に移行。市内を4方面に区分してそれぞれの地域を担当し、ポンプ車3台、梯子車2台、消防士13名が配置されていた。1900年にはポンプ車14台、梯子車4台、化学車2台へと増備が行われている。

ヘルメットの両側面に大きくマーキングされた「T-8」は、アメリカの消防で梯子車を称する「トラック」の頭文字と「第8小隊」を意味している。トラック8の前身となる梯子小隊は1904年11月2日に「トラックH」として発足。当初は隊名にA~Hを用いていたが、1906年7月6日より1~8へ改められ、この日からトラック8がスタートする。当時の運用車両は1904年式のアメリカン・ラ・フランス ヘイズ製55フィート梯子車だった。1958年6月22日からは火災防御態勢をバタリオン(大隊)制とし、8個大隊を編成しての活動となる。この時、トラック8は第3バタリオンの梯子隊として加わった。

このヘルメットはトラック8のキャプテン、ジェフ・ストローフィア氏から1990年7月5日に贈られたもの。ケアンズ・アンド・ブラザー社製のセンチュリー型FRP製ヘルメットで「880モデル」と呼ばれるものだ。アメリカン消防を代表するようなおなじみの皮革製ヘルメットのデザインを踏襲し、素材を合成樹脂製に変えて作られた伝統的なフォルムを持つ帽体で、前面には所属などを示すフロントピースが立ち、それを支える帽体頂部と金属製フロントピースホルダーはセントフローリアヌス・クロスをプリントしたオーソドックスなタイプを採用。帽体内のライナーは皮革と新素材繊維で作られ、フェルト地の不燃耳覆いが備わっている。フロントピースにはアメリカ合衆国の鳥である白頭鷲の羽根のもとにセントフローリアヌス・クロスが描かれ、DISTRICT OF COLUMBIAの文字と消火栓やとび口、梯子の絵を置き、中央に青空の背景と赤地に白抜きの連邦議会議事堂を配した消防章がシール貼りされている。また、白色の帽体の殆どが指揮者を明示しており、このヘルメットも中隊長用で「CAPTAIN」の文字が入れられている。中隊長としてトラック8に乗るキャプテンの災害現場へ向かう決然とした表情が思い描けるヘルメットである。

PROLOGUE 災害現場で活動する隊員たちの姿で、ひときわ目を引く存在が「ヘルメット」である。特徴的なデザインには様々な機能が秘められており、頭部保護という同じ目的を持ちながら国によっていろいろなパターンを見ることができる。そもそもヘルメットは軍事用として誕生し、古くから頭部に直接加えられる打撃力を減少し、直接的な負傷を防ぐことに重きがおかれてきた。後に用途ごとに進化を続け、使用される環境によって求められる性能やそれに伴う形状や素材の変化を見せてきた。消防で用いるヘルメットも、“災害”という敵から“消防士”という戦士を守るための“防具”であるといえる。  
災害現場という場所は何が起こるかわからない。突如、倒壊物が襲い掛かってきたり、足場が崩れて転落する可能性も大きいわけだ。頭部に大きなダメージが加われば命に関わる結果となり、脳に障害を与える危険もある。災害現場であれば頭を打って意識を失っている間に要救助者の生命は危険に曝され、隊員自身も更なる悲劇に見舞われないとも限らない。つまり、消防におけるヘルメットとは隊員はもとより、要救助者や仲間の命を結ぶ重要な存在であるといえる。ここでは世界の消防が使用する「消防ヘルメット」にスポットをあて、郷土を災害から守ってきた消防士たちの魂を伝えていく。

AUTUMN 2015/FIRE RESCUE EMS vol.71
 

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