2018.7.2
【第3回 合同訓練の勧め】
~ロープブリッジ救出訓練指導者~連載企画
横浜市消防局都筑消防署 仲町台特別救助隊
山崎 浩司 消防司令補
人命救助の最前線を担う特別救助隊。その磨き上げた救助技術を競い合う“消防レスキューの甲子園”、全国消防救助技術大会へ二年連続の出場を果たした都岡特別救助隊に密着し、指導する隊長の熱い想いをうかがった。
-第3回- 合同訓練の勧め
緊張感を経験するための訓練
練習ではいいタイムが出るのに、大会では結果につながらない。それは場所や雰囲気がいつもと違い、緊張が高まるのが大きな要因です。そして大会での緊張の度合いは「実績」「練習量」「経験」で左右されます。
まず「実績」ですが、こればかりは大会に出場しなければ積むことができません。逆にどのチームでもすぐに取り組めるのは「練習量」でしょう。本番の緊張感は練習量に反比例すると思います。どこにも負けない練習をこなし準備をしてきた、という自負があれば、自然と不安なく本番に臨めるはずです。
最後は「経験」です。緊張に支配されたなかでやる最初の一本。これをどれだけ経験しているかで、大会本番での動きが違ってきます。そこでとにかく訓練でこの緊張感を経験させよう、と考えて始めたのが合同訓練でした。
合同訓練のメリットとは
横浜市消防訓練センターを使用しての大規模な合同訓練は、平成28年から実施しています。最初の一本目は事前点検も含め大会と同様の形式で進行し、本番当日と同じ流れを経験できるように工夫しました。他の消防本部のチームがいますから、緊張感は通常の訓練とは違います。この雰囲気のなかでの一本が糧となるのです。
もともと神奈川県内の6チームで始めた合同訓練が、その後参加チームも増え、今では関東、東北圏内につながりが広がっています。単に競い合うだけでなく、各消防本部のいろいろな訓練方法を知ることが互いにとってあらたな発見であり、教えることは技術の再確認にもつながる。合同訓練ならではのメリットと言えるでしょう。
また所属の異なる救助隊員同士が顔の見える関係になることは、訓練終了後にも生きてきます。常に情報交換が可能となり、困ったときにはいつでも相談し合えますし、全国大会で知った顔を見ると気持ちも落ち着くものです。もちろん大規模災害時に緊急消防援助隊として派遣された場合などには、現場レベルでより連携が取りやすくなるはずです。
相手を尊重しともに成長する
合同訓練で他のチームにアドバイスをする際、私が気をつけているポイントは、相手のやり方を尊重する、ということです。我々は「横浜式」と言われる独特の結索方法をずっと変えずに続けていますが、同様に各消防本部、各チームにもそれぞれ受け継がれた伝統というものが存在します。それらを否定することは絶対にしません。代わりに、聞かれたことに対しては隠すことなくすべて教える。これはチームのみんなにも徹底しています。救助隊員はみんな仲間なのですから。
合同訓練を通じてあらためて感じたのは、先輩方が築き上げてきたものの偉大さでした。初めて声を掛けた消防本部の方々も合同訓練の依頼をスムーズに聞いていただける。それは横浜救助の歴史や実績、これまでの横のつながりが後押ししてくれたからだと思います。であれば、今度は私たちが次の世代のためにも横の関係をより緊密にしていく責任があるでしょう。
絆が財産になる
合同訓練を始めて2年。全国の消防本部40チームの救助隊員の方々と知り合うことができました。「人命を救う」という同じ志を持つもの同士、顔を合わせると話がつきません。最高の仲間であり、一生ものの財産です。
10年後、今の隊員たちが指導者となったときにも、全国の救助隊員同士で声をかけ合い、同じように合同訓練をして欲しいと願っています。