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2023.10.2

ロープレスキュー ここが知りたい!
ロープレスキュー ここが知りたい 救助犬

【第17回 救助犬と連携訓練!】
〜連載企画 ROPE RESCUE COLUMN ロープレスキュー ここが知りたい!〜

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連載企画 ロープレスキューコラム

みなさんは海外のロープレスキュー⼤会で、⽝が引き上げられている課題を⾒たことはありませんか?海外では消防と捜索・救助⽝(以下、救助⽝)には⾮常に深いつながりがあり、⼤会においても救助⽝との連携はポピュラーな課題の⼀つです。
国内では幼児や登⼭者が⾏⽅不明になり、公的機関では発⾒できず、のちに⺠間ボランティア等が発⾒するケースが何度も発⽣しています。震災や⾵⽔害においては、要救位置の特定に⼿間取ったり、しらみ潰しの捜索により⻑時間の捜索活動が強いられるケースも珍しくありません。救助⽝は捜索にかかる時間と労⼒を⼤きく削減できる(消防は救出に注⼒できる)可能性をもっています。
お隣の台湾では、都市部の消防局には複数頭の救助⽝が配備されており、前述のような⼈命検索活動で有効に活⽤されています。先般のトルコ⼤地震で2名の⽣存者を救出した台湾の消防救助チームにも、4頭の救助⽝が含まれました。しかも、そのうちの1頭は「Sato号」、⽇本から台湾消防に寄贈された「佐藤号」でした。このように⽇本で育成された救助⽝が海外の消防で活躍する例は多く、我が国の消防でももっと救助⽝を活⽤すべきだと感じます。
今回、素晴らしい⽅々にご協⼒いただき、検証訓練を実施しました。

協⼒
捜索⽝・救助⽝ハンドラー
Shikoku K-9 ⾚⽊さん
技術協⼒
NR Japan
(Grimp Japan2023優勝おめでとう!)
資器材協⼒
(株)キャラバン
会場協⼒
天空×⼤冒険ソラカケル

⾚⽊さんはこれまで、各地で消防との連携訓練を⾏われているほか、さまざまな⽝⽤ハーネスを試してこられましたが、なかなか良いハーネスがなかったそうです。今回は、キャラバンさんから借⽤したCAMP社「クロノス」を試⽤して訓練を実施しました。

このハーネスは調節によるフィット性が⾼く、活動時は下半⾝を分離させることができる優秀なものです。協⼒してくれた「プラタ号」「アガタ号」ともに、フル着装の状態でも不快そうなそぶりはありませんでした。

⼾⽥恵梨⾹似の美⼈「プラタ号」(左)北川景⼦似の美⼈「アガタ号」(右)※⼾⽥恵梨⾹さんも北川景⼦さんも兵庫県出⾝の⼥優さんです

吊り上げ(隊員の上に⽝)

まず、バタフライノットに救助⽝を吊り、ロングテール部分に介添隊員がつく⽅法を⾏いました。救助⽝の下に隊員が⼊ることで救助⽝の不安感を軽減させるねらいがあります。隊員の位置が低く⽝が浮いた状態では不安そうに動いてしまう結果になりましたが、隊員の太ももに⽝の脚が乗っている状態では⾮常に穏やかになりました。

⽝の位置が⾼いため、⽝が怯えて隊員にしがみついている様⼦

プルージック+調節式ランヤードも良い結果で、プルージック部分のエッジ越えに対応できるチームであれば、有効な選択肢と思われます。

隊員と⽝が密着していて、⽝が安⼼している様⼦

ただし、⽝が⽣⾝で吊られているため、万が⼀、⽝の脚などを踏んだり、地物に接触させたりすると⼤ケガを負わせるリスクがあります。また、不安がった⽝が壁⾯に⾜を伸ばそうとしたりするリスクもあります。「危険な突出物がない空間」かつ「ロープレスキューを習熟した部隊」に限ると感じました。

吊り上げ(隊員の下に⽝)

次に、海外の訓練でも⾒かける、隊員の下に⽝を吊るす⽅法を試しました。ハンドラーが股で⽝を挟む姿も⾒ていたので、もしかして…と思いましたが、空中に吊られた感覚が強いようで⽝が落ち着かず途中で断念しました。(隊員が下に移動して落ち着かせつつ降下しました。ナイス!)

担架搬送

担架に乗せることで前述のようなリスクを低減できるのではないかと考えました。⼩児を搬送する際のように⽑布を丸めて固定材とし、伏せの状態で軽く縛着。ハーネスに⼆次確保をとりました。設定時点では⽝もリラックスしていて、かなり良さそうに⾒えました。

この時点では良さそうに⾒えたが…

しかし、軽い担架は想像以上に不安定で、担架が壁⾯に接触した⾳や衝撃で⽝が驚いてしまい、⽴ち上がって抜け出しそうになりました。ハイラインや完全な空中では良いかもしれませんが、あまり良い印象は残りませんでした。

ちょっとした隊員の動きで担架が振られて、⽝が驚いてしまう

採集カゴ

僕が資器材の運搬で使っているカゴを、担架のように設定してみました。こちらもカゴの中で⽝の⾝体が動き回らないように⽑布を詰め、⽝はおすわりの状態で乗ってもらいます。もちろん、カゴからの転落を防ぐためハーネスで⼆次確保も必須です。こちらは⾮常に安定し、⽝もかなりリラックスしているように⾒えました。
ロープレスキューの⾼いスキルがない場合や、壁⾯の状況が悪い場合、⽝が落ち着いていない場合はこの⽅法が最善だと感じました。おそらく、アニマルレスキューでも有効な戦術だと考えられます。救助⽝関係者は、道具⼊れにこういったカゴを使っておくと良いかもしれません。

考 察

空中に吊るされた⽝は多かれ少なかれ不安感を抱いています。これをどのように軽減させられるかが⼤きなポイントだと思います。ハンドラー⾚⽊さんによれば、恐怖や興奮に陥った⽝は、その後の捜索活動に⼤きな影響が出るそうです。
また、今回のNRの隊員たちが、⽝に慣れていて、⽝とコミュニケーションを取っていたことが、活動をスムーズにしたように⾒えました。彼らは以前にも救助⽝との連携訓練を⾏なっており、積極的に⽝と交流していました。⽝に触れて挨拶する、⽬線を合わせる、おやつをあげる、少し⼀緒に遊ぶなど、アイスブレイクを⾏うことで⽝側の緊張を和らげることができると考えられます。
また、隊員の緊張や不安は⽝にも伝わってしまうため、隊員には⾼いスキルと、隊員が落ちついて介添できる設定が重要だと思います。ちなみに、これらは⼈間の要救助者にも通じるものです。

さて、そもそも、実際の災害現場で救助⽝を吊るすような現場活動はあり得るのでしょうか?これは、⾵⽔害や震災でロープレスキューが必要になるのと同じで、崩れた建物や⼟砂を越えて現場に⼊るために必要となり、IRTの訓練項⽬にもあります。僕より年上の消防職員なら、9.11 で活躍したライリー号の写真を⾒たことある⽅もいらっしゃるでしょう。我が国では定期的に⼤規模な災害が発⽣していますから、必須の技能と⾔っても良いのではないでしょうか。

写真:アメリカ海軍

今回の訓練では、地域の救助⽝ハンドラーとの顔の⾒える関係作り、そして要救助者の不安に寄り添えるスキル構築のためにも、救助⽝との連携は⾮常に有意義なものだと感じました。みなさんもぜひ、お近くの救助⽝ハンドラーとコンタクトを取っていただき、良い関係を構築していただければと思います。

大西 隆介(おおにし りゅうすけ)
大学時代に公共政策を学び、山岳部などの経験からロープレスキューの世界へ。日本の労働安全法令を踏まえつつ消防組織に適した救助技術を研究している。救助大会「縄救」などのイベントも主宰。通称「ジミーちゃん」

office-R2 ロープレスキュー講習主に10.5mm〜11mmのロープ資器材を用い、国内法令に準拠しつつ、現場に即した技術を重視。高所作業や競技の技術ではなく、消防活動におけるベストを提案する講習。レベル1〜2では「ロープ高所作業」「フルハーネス」の特別教育修了証が交付される。講習などの情報はHP、Facebook、Instagramなどで随時更新。

お問い合わせ090-3989-8502
ホームページhttps://r2roperescueropeacce.wixsite.com/office-r2

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