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2024.9.27

ロープレスキュー ここが知りたい!
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【第21回 今さら聞けないカラビナの基本】
〜連載企画 ROPE RESCUE COLUMN ロープレスキュー ここが知りたい!〜

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連載企画 ロープレスキューコラム

さて、今回は初心に返って、基本的な資器材について取り上げてみたいと思います。皆さんはロープレスキューにおいてどんなカラビナを使用されていますでしょうか?市場にはさまざまなカラビナが流通しており、それらにはさまざまな設計思想があります。ぜひ装備選びの参考にしてください。

形状の違い

◎変形D型

非常にポピュラーな形状ですね。今では滅多に見かけませんが、昔は「D」の形のカラビナがたくさんあったため、上下が非対称のD型カラビナはこう呼ばれます。
メリットはサイズに対して強度の強い製品を作れます。一時期はカラビナの主流となりました。強度を維持しつつ軽量化できるので、クライミング用では現在も人気です。
一方、強度が発揮できるのはスパイン側直近の狭いエリアで、ゲート寄りに荷重がかかる場合や、Y字方向や幅の広いテープ類での荷重では強度低下を引き起こします。また、上下も左右も非対称なため、カラビナが自然に回転してしまいやすい傾向があります。
また、幅の広いテープ類と組み合わせて大きな負荷がかかると、形状の問題から幅の広いテープ類を傷めてしまう場合もあります。
ロープレスキューやロープアクセスにおいては、おもにハーネスに取り付ける器具(下降器具やバックアップ器具)におすすめです。

左:変形D型 中:HMS型右:オーバル型

◎HMS型

いわゆる「洋梨型」カラビナです。もともとはムンターヒッチ(半マスト結び)を行うためのカラビナです。カラビナの内容量が大きく、太いものに掛けやすい形状です。強度も高めの製品が多いです。
ただ、強度低下に関して変形D型カラビナと同様の傾向があり、太いものやY字荷重の収まりがいいけれど強度低下しやすいことに留意して使用する必要があります。ロープレスキューやロープアクセスの用途では、私はあまり使わない形状です。

◎オーバル型

消防においては、これこそカラビナというO型。現在のロープレスキュー・ロープアクセスではこの形状のカラビナがもっとも使用されています。
まず、デメリットとして形状の特性から強度が高くありません。荷重がかかるポイントが、必ずスパインから離れてしまうからです。その結果、D型と比較して「弱い」、もしくは「同じ強度なのに重い」となってしまいます。こういった点から、以前は敬遠されていました。
しかし、そこに大きなメリットもあります。オーバル型の表示強度は、いわば強度低下した後の数値であり、太いものやY字荷重を掛けても、大きな強度低下の不安が少ないのです。また、上下・左右にほぼ対称な形状のため、カラビナが反転したり横を向いてしまうリスクが低くなります。幅の広いテープ類へのダメージも低い傾向があります。
私はほぼすべてのカラビナに、このオーバル型を採用しています。とくに最近は小型のモデルを愛用しています。

ロックシステムの違い

◎スクリューロック

ベーシックな安全環です。メリットとしては、任意のタイミングでロックできることと、多少緩んでも即座には開放に至らないことが挙げられます。
デメリットはやはり、締め忘れが非常に多いことです。消防の訓練で締め忘れを指摘することはしょっちゅうです。それから、障害物や地物などに強く接触してしまい、開かなくなってしまうこともあります。
こういった点をふまえて、私は支点作成用のカラビナに限定して、スクリューロックを採用しています。支点部分は活動中に反復点検しやすいこと。大きく動揺したり伸縮したりしにくいので、最悪、安全環が開いていてもただちに危険がないことが理由です。
ちなみに、安全環が締まっていないと強度低下するのは123カラビナのような旧式のもので、近代のカラビナは安全環が開いていても強度には影響ありません。

◎ダブルロック

ツイストロック、ワンタッチロックとも呼ばれる、ばね仕掛けの安全環を横方法へ回転させれば開けられるタイプです。片手で扱いやすく、素早い着脱が可能です。
デメリットとして、ワンタッチで誤脱することがあり、命がかかっているポイントには不適です。たとえば自己確保用ランヤードやカウズテールに使うと非常に便利ですが、いちばん不向きな場所です。また、障害物や地物などに接触した際にゲートが開いてしまい、強度低下を起こしたり、カラビナが意図しない物にかかってしまうことがあります。
私は倍力システムを作成するためのプーリーとセンダーの接続に使用しています。ここはカラビナが誤脱しても誰も落ちませんので、どんなカラビナでも問題ありません。トリプルロックより手早くハーネスから外したり戻したりできます。スクリューロックと違い、自動でロックがかかるので、ハーネスから勝手に外れて落下するリスクも低くなるからです。
前述のとおり、支点作成やランヤード、下降器など、命のかかっている部分には一切使用していません。

左:スクリューロック 中:ダブルロック 右:トリプルロック

◎トリプルロック

最近のロープレスキューではすべてこのカラビナにしているチームも多いですね。開くためにはまず「安全環を上げる(下げる)」「安全環を回す」という作業が必要で、比較的安全性が高いロック機構です。
デメリットとして、単純に片手での操作に習熟が必要なため、初心者向きではない点が挙げられます。これは結構馬鹿にできなくて、一旦ハーネスに戻すのが面倒だからと地面に置いたり、手に持ったままほかの作業をして、落下に繋がったりします。
また、「安全性が高い」という思い込みから点検が疎かになり、整備不足や異物噛み込みによる閉鎖不良を見逃したり、障害物や地物との接触に無頓着になり、誤開放を起こすことも珍しくはありません。非常に便利で滅多にトラブルは起きないけども、だからこそ基礎基本を徹底する必要がある、という点では、もしかしたら上級者向けといえるかもしれません。
私は下降器具、確保器具、自己確保ランヤード類、高取り用プーリーなどにこのタイプを使用しています。

左:小型カラビナ 中:ワンタッチに近い操作ながらロック性能の高い「スライダーロック」 右:反転防止ワイヤー付カラビナ

いかがでしたか?皆さんの部隊、チームのカラビナを選ぶ際に、ぜひ参考にしてみてください。

大西 隆介(おおにし りゅうすけ)

大学時代に公共政策を学び、山岳部などの経験からロープレスキューの世界へ。日本の労働安全法令を踏まえつつ消防組織に適した救助技術を研究している。救助大会「縄救」などのイベントも主宰。通称「ジミーちゃん」

office-R2 ロープレスキュー講習主に10.5mm〜11mmのロープ資器材を用い、国内法令に準拠しつつ、現場に即した技術を重視。高所作業や競技の技術ではなく、消防活動におけるベストを提案する講習。レベル1〜2では「ロープ高所作業」「フルハーネス」の特別教育修了証が交付される。講習などの情報はHP、Facebook、Instagramなどで随時更新。

お問い合わせ090-3989-8502
ホームページhttps://r2roperescueropeacce.wixsite.com/office-r2

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