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2021.1.8

ロープレスキュー ここが知りたい!
救助訓練 ロープレスキュー ここが知りたい

【第3回 二系統、冗長性について考えてみよう】
〜連載企画 ROPE RESCUE COLUMN ロープレスキュー ここが知りたい!〜

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連載企画 ロープレスキューコラム

安全な活動をする上で「バックアップ」は非常に重要なものです。「冗長性」という呼び方もされます。ロープ救助や高所作業においては、資器材やシステムが二系統であることが重要視されており、日本の法令にも採用されています。今回はこの「冗長性」について考えてみましょう。

〈日本の法令における二系統の例〉

墜落制止用器具の規定
作業姿勢用ロープや手足とは別に「墜落制止用ランヤード」の使用
ロープ高所作業の規定
メインロープとは別に「ライフライン」の使用

まず、システムのなかで脆弱な場所を「クリティカル・ポイント」と呼びます。下の写真のように、破断すると致命的な結果をもたらすカラビナなど、一系統になっている部分を指します。システムの安全確認をする際は、これを見つけられるか?が重要になります。

とあるロープアクセス団体では、あらゆる資器材は一系統というルールがあります。そのため、リギングプレートすら2枚重ねにするか、スリング等でバックアップするよう教わります。一方で、ハーネスはそこから除外されており、ハーネスを二重に着ることはありません。(ただし1つのD環は一系統だという指導者もいるようです)アンカープレートが破断するというのはおおよそ考えられない状況ですが、そこではクリティカル・ポイントにカウントされます。
斜めブリッジで活動をするとき、ブリッジ線を2本展張するのは良い方法です。しかしコントロール線が一系統の場合、外れるとターザンのように滑走して下方の支点に激突してしまいます。これが水平のブリッジ線では、仮にコントロール線が外れても滑走危険は少ないので、一系統で十分です。複雑なシステムになればなるほど、クリティカル・ポイントの見落としが生まれやすくなりますので、シンプルさが重要になってきます。

また、写真のように隊員がランヤードで要救と繋がる確保方法、ロープアクセス系の講習で習う方法ですね。もし本当に要救が落下したとき、隊員はケガをしないでしょうか?そこに要救が宙吊りになって、活動を継続できるでしょうか?全否定はしませんが、自分や要救にリスクのあるビレイ・バックアップは、公助としての救助では積極的に使うべきではないと思います。自己確保(墜落制止)と同じで、とにかく付いていれば良いというものではなく、それが実際に作動したときに被害が出ないかどうかも大事なポイントとなります。
冗長性は単に二重にするだけではありません。消防の座席降下は1本の小綱で座席結びを行い、一系統で降下する技術です。冗長性もクソもないように思われます。しかし、降下前に安全管理員が念入りに座席を点検し、別の隊員がロープ端末を保持確保しておけば、それなりの冗長性は確保できるでしょう。(あくまでそれなりですよ)

私は、アンカープレートやダブルプーリーなどの資器材については「カラビナ穴1つ」「ロープ穴1つ」を一系統とカウントしています。通常のダブルプーリーはプレートが3枚あるので二系統。スイベルプーリーはスイベル部がネジ1本で留まっているので一系統との考えです。もちろん、スイベルの点検をすることで十分な信頼性があると判断するのもありだと思います。しかし、私はそこまで自分や受講生の観察眼を信用していないので、バックアップを取るようにお願いしています。

なにをクリティカル・ポイントと考えるのかは、各組織の価値観や技術論に影響されるので、なかなかスッキリした答えは見出せません。完全な二系統を実現するのは難しいですし、複雑になりすぎて遅い、見落としだらけ…では無意味です。逆に、だから一系統で良いのだ!というものでもありません。状況想定や手技ごとにリスクを見積もって、必要最低限の冗長性を確保せねばなりません。難しいですね~。

もっといろいろ例を挙げたいのですが、文字数の関係もありますし、続きは講習で…ということで、次回もお楽しみに!

大西 隆介(おおにし りゅうすけ)
1987年生まれ。大学時代に公共政策を学び、部活では登山やクライミングに没頭した経験からロープレスキューの世界へ。日本の労働安全法令や消防組織に適した救助技術を研究している。救助大会「縄救」や「日台消防交流会」などのイベントも主宰。

office-R2 ロープレスキュー講習主に11mmロープと欧米の資器材を用いた「目的としてではなく救助の手段としてのロープレスキュー」技術講習。レベル1~2講習は基礎的な技術と知識のほか、国内法令や安全管理について学ぶ。受講者には「ロープ高所作業」「フルハーネス」の特別教育修了証が交付される。
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