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2017.7.3

消防本部・消防署
消防車両 FIRE REPORT 東日本大震災 訓練 宮城県 特別救助隊 仙台市

FIRE REPORT #141 仙台市消防局 特別機動救助隊 スーパーレスキュー仙台

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多様化する災害に対応するために
スーパーレスキュー仙台が誕生

仙台市は東西に広がった都市で、西部山間部から中心部、東部沿岸地区に向かうにつれ、山地、丘陵地、台地、低地とさまざまな地形を有し、想定される災害形態も多岐にわたる。仙台市消防局では多様化する災害、大規模な災害事象に対応するため、平成19年4月に大規模な組織改正を実施している。その際、平成18年3月に改正された「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令」による特別高度救助隊として発隊したのが「特別機動救助隊(愛称:スーパーレスキュー仙台)」だ。火事や事故現場のほか、NBC災害をはじめとした特殊災害、大規模自然災害発生時など、活動困難な状況で迅速な対応を図るため、豊富な経験と知識、高度な救助技術を持ちあわせた精鋭隊員で構成されている。仙台市全域で発生する災害事案への対応はもちろん、緊急消防援助隊、国際消防救助隊(IRT)として国内外における災害現場での活動体制を常時整えている。現在、市街地北部に位置する「泉消防署八乙女分署」に1隊、東部沿岸地区の消防力の要として平成29年4月に開署した「若林消防署六郷分署」に1隊、総勢32名の隊員が所属し、両分署にはそれぞれ、地域の災害特性に応じた装備が配置されているが、どちらの隊もあらゆる災害に対応できるよう定期的に合同訓練を行い、知識と技術を共有している。

photo2
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スーパーレスキュー仙台のエンブレムは、「仙」の文字を抽象化した仙台市の市章をベースに、伊達家の兜をモチーフにしている。

冷静に確実に対応するために鍛錬
あらゆる救助活動を想定し、日ごろから入念に鍛える

いつ何時に発生するかわからない大規模災害に備え、倒壊現場、化学災害現場、放射性物質の漏えい現場など、特殊環境下での救助活動を想定した訓練を積み重ねている。仙台市は昭和62年に国際消防救助隊(IRT)協力都市となり、現在、特別機動救助隊の隊員が国際消防救助隊員に登録されている。登録隊員に求められる事項として、ショアリング、ブリーチング、クリビング、CSRといった都市型捜索救助技術の知識、技術が挙げられる。特別機動救助隊員は、自隊の習熟訓練はもちろん、国際消防救助隊としての連携を視野に、県内、東北地方の国際消防救助隊登録隊員との合同訓練・情報交換を定期的に重ねている。また、重機などを豊富に備えた宮城県解体工事業協同組合との合同訓練を積極的に実施し、連携体制を確保。東日本大震災時には的確な現場活動を展開した。

ショアリング倒壊建物の開口部を支柱で支えて安定化させる。
CSR瓦礫内部へ進入し、要救助者を救出する。
ブリーチングブリーチング破壊器具を活用し、コンクリート板を抜く。
クリビング重量物を徐々に持ち上げ、角材で確保。
NBC災害訓練NBC災害の発生時に、最前線のエリアで活動する特別機動救助隊。迅速かつ安全確実な活動を実現するため、特殊資機材の取り扱いや関係各隊の連携訓練を行っている。
水難救助訓練
瓦礫からの救助訓練
大深度救助訓練大深度救助訓練
特殊災害対応訓練(電気)
中洲救助訓練

大規模震災や水難救助の活動を主導する
若林消防署六郷分署

六郷分署は水槽付消防ポンプ自動車、高規格救急車、救助工作車Ⅲ型を備えるほか、これまで各署に点在していた特殊車両(遠距離送水車・重機など)を集約するとともに、新たに水難救助車が配備されるなど、東部沿岸地域における大規模自然災害、石油コンビナート火災などへの対応力強化が図られている。また、東日本大震災の経験を踏まえ、長時間の停電にも耐えられるよう軽油2,000リットルのタンクを有する発電設備が整備され、ガスについては都市ガス、LPガスの2系統を採用するなどライフラインの二重化が図られている。部隊、車両、装備、そして施設面の充実強化が図られた六郷分署は、東部沿岸地域の災害対応、防災の拠点としてスタートを切り、地域住民の方々の期待に応える活動を行っている。

若林消防署六郷分署
平成29年4月から特別機動救助隊に新たに導入された防火服は、レスキューオレンジをメインカラーとし、肩・肘・膝部分にはブラックで補強材が施されている。立体製法と軽量化により活動時でも軽さを実感できる仕様になっている。
救助工作車Ⅲ型

平成28年4月より導入された車両で、クレーンやウインチを装備。大型油圧救助器具をはじめ、IRTでの救助法にも対応した削岩機ビーガンやカットンブレイク、地中音響探知機デルサーなどの高度救助資機材が搭載されている。

左側収納部
左側収納部。ザイルロープを「降下」以外にも「救出」に使用できるのは、仙台市では特別機動救助隊のみとなっている。
カットンブレイクカットンブレイク
ビーガン
デルサー
水難救助車

平成29年4月に六郷分署の開署にあわせて配置。港湾・河川敷などあらゆる水難救助現場へのクイックアクセスが可能。管内の細い林道などへも迅速に対応でき、車内にて着替えができる十分なスペースを確保できるよう、バス型やSUV型ではなく現在の仕様に。状況に応じ水上オートバイを牽引し、レスキュースレッドも積載することが可能。車載の水中探査装置は視界の悪い水中で物体の波形をとらえ、最大50m離れた船上や陸上のモニターに表示する。

水難救助車車内
汚染水域潜水用フルフェイスマスク
水難救助訓練
水中探査装置
東部地域の期待を担って待望の若林消防署六郷分署が開署
平成23年3月の東日本大震災に伴う巨大津波により、仙台市東部沿岸地区は壊滅的な被害を受け、仙台市消防局も沿岸部に配置されていた若林消防署荒浜航空分署(仙台市消防ヘリポート)が被災した。震災後の東部地区の消防体制は、周囲の消防署の対応により確保してきたが、復興が進み、また、平成27年12月の地下鉄東西線の開業に伴う東部地区への人口増加が見込まれるなか、大規模災害に対する備えという観点からも同地区への消防力の再整備が急がれていた。これらの背景を踏まえ、平成29年4月、東部地区の災害対応の新たな拠点として「若林消防署六郷分署」が開署した。

若林消防署六郷分署

 
 

都市型災害の活動を主導する泉消防署八乙女分署

特殊災害対応車、特別高度工作車、赤外分光分析装置などを有する八乙女分署隊は、主に都市型災害や特殊災害時などの活動の要となっている。

八乙女分署 武田救助隊員
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件をテレビで観て、人の役に立てる消防士になることを決意しました。現在は特別機動救助隊の一員として、大規模災害などが発生したときに一人でも多くの人を救うために、日ごろから訓練を欠かさず、知識を身につけるようにしています。
特別高度工作車

火気の使用ができない現場での破壊・切断作業に適したウォーターカッターや、強力な排煙能力を有する大型ブロアーを搭載した車両。地下火災やトンネル火災の際に活躍。

左側収納部
大型ブロアー
特殊災害対応車

平成20年4月に配備された特殊災害対応車は、日野レンジャーがベース。東北では八乙女分署にしか配置されていない。陽圧防護服やHazMatID・GasIDを搭載。陽圧室は分析室として使用し、大規模災害時には指揮本部として活用できる仕様になっている。

左側収納部
陽圧室
大規模自然災害時の災害活動

東日本大震災

平成23年3月11日、地震・津波の直撃を受けた東北では、岩手、宮城、福島3県の太平洋沿岸地域を中心として、死者およそ16,000人、行方不明者およそ3,000人にも及ぶ未曾有の災害となった。仙台市消防局でも、若林消防署荒浜航空分署が壊滅的な被害を受けた。消防職員も誰もが被災しているなか、全職員が高い士気と精神力で献身的な活動を行った。


緊急消防援助隊として岩手に出動

平成28年8月30日に岩手県に上陸した台風10号に伴う記録的な大雨は、東北地方や北海道に人的被害や河川氾濫、土砂災害などの甚大な被害をもたらした。仙台市消防局は8月31日から9月9日まで、緊急消防援助隊宮城県隊として特別機動救助隊員を含む延べ178人を岩手県に派遣。被害の大きかった岩泉町をはじめ、各所で河川氾濫により孤立した被災者の救出などにあたった。


六郷分署 林消防救助係長
東日本大震災当日、瓦礫まじりの海となった仙台市東部地区で救命ボートによる捜索・救助活動を行いました。ボートは瓦礫に阻まれて幾度となく止まり、辺りが暗くなってからは現在地を確認することすら容易ではない状況でしたが、コンビナート火災の炎を頼りに、暗闇に向かって進み続け、隊員全員が想いを一つにして活動しました。どこまで力を尽くせたか、何が正解だったかと考えることが今もあります。それでもこの経験を生かし、伝え、未来へ繋げていくことが、私たちの責任であり、私たちにしかできないことだと思います。

第46回全国消防救助技術大会
日時:平成29年8月23日(水) 9:00?16:30
場所:宮城県総合運動公園グランディ・21
(宮城県宮城郡利府町)

 
第46回全国消防救助技術大会のスローガンは結索(ロープ結びのこと)の結(ゆい)の字に、人と人、心と心の結びつきを大切にしていくという想いを込め、「震災時の支援に対する感謝」、「未来を切り開く仙台・宮城の姿」を発信するという本大会のコンセプトを表現しています。この大会が宮城県で開催されるのは実に14年ぶり。全国から集まった精鋭隊員の熱い戦いが繰り広げられます。
結?感謝そして未来へ? 46th SENDAI MIYAGI NATIONAL RESCUE MEET

【取材協力】
仙台市消防局 特別機動救助隊
泉消防署八乙女分署:仙台市泉区八乙女中央3-7-60
若林消防署六郷分署:仙台市若林区今泉字久保田東32-65


SUMMER 2017/FIRE RESCUE EMS vol.78

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