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2021.4.21

消防ヘルメット
消防ヘルメットコレクション FIRE HELMET COLLECTION

命の絆No.69 オーストリア フォアアールベルク州消防

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命の絆 消防ヘルメット

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THE BOND OF BROTHERHOOD
助けを求める声があるならば、いかに過酷な災害現場であっても身を投じていく消防士たち。

時代や国境を超え、すべての消防人の心にある博愛の精神が彼らを突き動かす。隊という名の“家族”が、危険な現場で協力し合い“人命救助”という任務を成し遂げる。

「消防ヘルメット」はそんな彼らの活動を支え、危険から身を守る盾となってくれる。現場には要救助者、仲間、そして己の命をつなぐ博愛の絆があり、その象徴が消防ヘルメットといえるであろう。

 
No.69 オーストリア フォアアールベルク州消防
カールF.ワインベルガー社 アルミニウム合金製 「スパイダー・ヘルメット」

 
オーストリアのフォアアールベルク州(VORARLBERG STETE)は、チロル山地のもっとも西端に位置する国内2番目に小さい州で、面積は863平方キロメートル、人口は125万人あまりである。ブレゲンツ、ドルンビルト、フェルトキルヒ及びフィルデンツの4つの郡で構成され、州庁はブレゲンツ郡で唯一の市、ブレゲンツ(BREGENZ)にある。州名のフォアアールベルクは、スイスのサンクトガレン・カントンから見て「アールベルク峠の手前」という意味から名付けられたという。ボーデン湖、スキーリゾート、森林などの観光資源に恵まれ、地場産業の精密機器の生産も好況を博している。

この地には古来ケルト民族の集落があったが、「ガリア戦記」にもあるように、征服されてローマ軍営地になっていた。3世紀になるとゲルマン人が進攻して入れ替わり、住民もローマ人、テレマン人、ゲルマン人と混在しながら発展したという。やがて西の隣国のリヒテンシュタイン候爵に列するブレゲンツ伯爵が統治するが、16世紀になるとオーストリア帝国のハプスブルグ家の支配するところとなり、フランツ・ヨーゼフ皇帝の列候であるモンフォール伯爵により20世紀初めまで統治された。なお1918年11月、第一次世界大戦の終結とともに、この州の住民がスイスへの帰属を希望し州民投票によってその意を要求したが、オーストリア帝国及び国外からこの案は拒否され、今日にいたっている。

オーストリアで常設消防体制が敷かれているのはウィーン、グラーツ、インスブルック、ザルツブルク、リンツ及びクラーゲンフルトの6都市のみで、それ以外はすべてボランティアとなっている。オーストリア国内の常設消防職員は2,400名、ボランティア消防は234,100名※が活動しているが、ボランティアといえども庁舎、車両、個人装備は近代化が進み運用制度も整備されており、消防事情として各自治体に定着している。

ヘルメットは皮革製のものからアルミニウム合金製まで各種使われてきたが、ドイツに併合されてから第二次世界大戦中はドイツ製のM-1934スチール製(消防/警察隊専用)が使われ、その後1961年からは旧西ドイツの安全基準であるDIN 14940に準拠してオーストリア国内で国産化されたものが第一線へと供給されていた。そして1970年代になり、独創的な形態のヘルメットが再び登場する。それが今回、あるいは第41回目で紹介したウィーンのカールF.ワインベルガー社のアルミニウム合金製ヘルメットである。

全体フォルムは中世騎士の防具にも似ていて、その特徴は頭頂部から庇の手前まで伸びている6本の筋交いにある。「スパイダー・ヘルメット」と称される由来は、この筋交いがクモが長い脚を伸ばしているようにも見えるからである。帽体内は薄い黒染めの皮革を内張りし、ライナー、ハンモック、そしてあご紐も皮革仕上げ。帽体正面にはダマツセン(七宝焼)で作られた盾型の紋章が付けられている。1918年にフォアアールベルク州の紋章として制定されたこのデザインは、かつてこの地を統治していたモンフォール伯爵家のものであり、3本のバナー(旗)を赤色で、竿頭を3つの金色のリングで表している。このヘルメットは1988年まで使われ、以降、ガレ/ドレーゲル社のF1型ヘルメットに順次更新された。

このヘルメットを贈っていただいたのはブレゲンツ市のボランティア消防幹部のウォルフガング・ゲゴーリク氏で、1994年9月23日に届けられた。西チロル地方の緑豊かで静かな町、ブレゲンツを思い起こさせるヘルメットである。

※うち、フォアアールベルク州のボランティア消防は男6,770名、女182名 ◯青少年ボランティア:男670名、女80名 ◯予備役ボランティア:男26名、女8名(2006年調べ)

PROLOGUE 災害現場で活動する隊員たちの姿で、ひときわ目を引く存在が「ヘルメット」である。
戦闘用の兜をルーツに持つヘルメットの目的は、衝撃から頭部を守り、直接的な負傷を防ぐためにあるが、国によりさまざまな特色を見せ、性能やそれにともなう形状、デザイン、用いられる素材は時代や環境とともに進化を遂げ続けている。消防で用いるヘルメットも、“災害”という敵から“消防士”という戦士を守るための“防具”であるといえる。

消防におけるヘルメットとは、要救助者や仲間の命を結ぶ重要な存在である。災害現場では突如倒壊物が襲い掛かってきたり、足場の崩れ、転落の危険に晒される。もし頭を打ち意識を失えば、要救助者の生命は守れない。隊員自身もさらなる悲劇に見舞われないとも限らない。消防ヘルメット一つひとつにはストーリーが宿っている。世界の消防が使用した「ヘルメット」から、郷土を災害から守ってきた消防士たちの魂を伝えていく。



05|06 2021/FIRE RESCUE EMS vol.97

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