2020.10.30
【第2回 ロープレスキューの位置づけは?】
〜連載企画 ROPE RESCUE COLUMN ロープレスキュー ここが知りたい!〜
ロープレスキューは一時期に大変流行しましたが今ひとつ定着せず、「資器材は導入されたものの使いこなせていない…」「やっぱり三つ打ち」という本部が非常に多い現状がありました。この数年は再び興味を持つ方が増え、自主勉強会や大会なども盛況となりつつあります。この熱気を一過性の流行にしないためにも、ロープレスキューが消防活動のなかでどういった役割を持つのかについて、整理してみたいと思います。
「ロープレスキュー」という1つの分野があると認識されていることが多いのですが、これは少し間違った認識です。ロープ救助(三つ打ち含む)は三連梯子、梯子車、クレーン、ヘリコプターなどと同じ「高所(低所)救助」のなかの1つの技術です。ロープ救助も、それ以外の高所救助技術も同じルールで動き、守備範囲が重なり合った仲間です。野球というスポーツにファースト、セカンド…とポジションがあるイメージです。サッカーやラグビーのような別ルールの競技という関係ではありません。
※ルールとは物理法則や安全係数、労働法規などを指しています
高所救助の各種技術のうち、現場の施設・環境(エレベーターや階段など)を活用するのがもっとも「安全・確実・迅速」な活動であり、第一選択となります。それが選択できない場合は、梯子車→クレーン→三連梯子→ロープ、ヘリと続きます。安全・確実・迅速のルールは並び通り「安全第一」です。いかに迅速でも、安全性で優っている手技が優先選択となります。梯子車で救助できる要救助者を、三連梯子やロープで救助するのは原則として不適切な行為と言えます。
詳細は省きますが、訓練場では梯子車と三連梯子では設定に1分程度の差しか出ませんので、高所救助では差はほとんどありません。一方で、火災現場で火元室に手振り要救がいる場合などは、迅速性が安全性に直結しますから、その1分の差が優先され三連梯子の適応となるでしょう。
(もちろん、三連梯子も梯子車もしっかりと訓練している前提なので、習熟度が足りないというのは技術論とは別問題になります)
ロープ救助( 三つ打ち含む)はほかの技術と比べて安全・確実・迅速のいずれも劣っています。すべてそのときの隊の技術・判断・設定に左右されるからです。必要になる事案も少ない傾向にあります。しかし、ロープ救助の適応となる事案は、梯子車や三連梯子では活動ができない厳しい事案ということですから、訓練や教養は高いレベルまで実施しておかねばなりません。みなさんは「最初で最後の砦」なのですから。
その上で三つ打ち技術と編みロープ技術の適応の違いも洗い出しておく必要もあります。私は5名の救助隊を想定し、次のように考えています。
三つ打ち | 編みロープ | |
高低差 | 低い場合(10m未満) | 特に制限なし |
要救等の荷重(体重) | 重すぎない1人荷重 | 2人荷重でも可 |
上部支点、地面などの環境 | 恵まれている場合に有効 | 恵まれていない場合でも可 |
人数 | 応援隊も活用できる | 実働2名でも可能 |
大人数で活動できる場合は三つ打ちで2人荷重も可能でしょうし、各所属でいろいろなテストを行い、限界ラインを洗い出してみてください。私は編みロープの指導者ですが、適応の範囲内であれば三つ打ちでちゃちゃっと救助すれば良いとも思っています。もちろん、大規模災害や鉄塔救助、宙吊り、狭隘空間などを想定し、三つ打ちの限界をカバーできる編みロープもしっかり修練すべきです。
「ポンプ隊との意思疎通が」という意見を耳にしますが、三つ打ちだったとしても救助隊がポンプ隊にロープ設定を任せることはないと思いますし、兼任隊ならみんなでどちらも訓練しておくべきです。
(編みロープを基礎から身につければ、三つ打ちでできる活動は編みロープでも短時間で救助できます。結局のところ訓練量の問題ではないでしょうか)
まとめ
ロープレスキューを訓練し、技術を向上することは素晴らしいことです。しかし、先に書いた通り、みなさんが持つ各種技術の適応や限界を再確認し、訓練内容や頻度を見直し、もし必要なら修正し、ひとつながりの技術として整理することが、新しいステップの一歩目だと考えています。その上で、守備範囲の穴を埋めていくために、ロープレスキューを活用していってほしいと思います。
大西 隆介(おおにし りゅうすけ)
1987年生まれ。大学時代に公共政策を学び、部活では登山やクライミングに没頭した経験からロープレスキューの世界へ。日本の労働安全法令や消防組織に適した救助技術を研究している。救助大会「縄救」や「日台消防交流会」などのイベントも主宰。
office-R2 ロープレスキュー講習主に11mmロープと欧米の資器材を用いた「目的としてではなく救助の手段としてのロープレスキュー」技術講習。レベル1~2講習は基礎的な技術と知識のほか、国内法令や安全管理について学ぶ。受講者には「ロープ高所作業」「フルハーネス」の特別教育修了証が交付される。
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