善通寺市消防団の概要
善通寺市は香川県の北西部に位置する東西8.9㎞、南北7.96㎞、面積39.93km²の市。
弘法大師空海生誕の地で信仰の街として知られるとともに、明治以降は軍隊の駐留により市街地の整備が進みました。
現在でも中心部の軍事施設跡に自衛隊の駐屯地や大学、研究機関などが立地しています。
消防団は9個分団17班、定数360名(うち女性団員17名)で、消防本部と連携しながら市内全域の防災を担います。

訓練後、集合した第五分団。前列中央左は平岡市長、右は宮武消防団長
「思いやりと敬意」
世代を超えたつながりが“力”となる
第五分団の現在の団員数は53名で、東部、中部、西部と3班に分かれ、管轄区域である与北町をはじめ要請に応じて市内全域で活動を行なっています。重んじているのは団員間のコミュニケーション。消防団には幅広い年齢層の団員が自分の時間を都合しながら参加するので、互いへの気配りが欠かせません。活動中、親子以上に年の離れた団員に指示を与えたり、逆に年長者に意見しなければならないこともありますが、普段から関係がうまくいっていないとそれがストレスになり、結果的に団から離れる人も出てしまいます。そのため、年長者は年下の団員が遠慮して無理をしていないか、常に気を配りながら接しているとか。おかげで団の結束は固く、意気盛んに活動に臨んでいます。

平成3年式の小型動力ポンプ積載車。資機材を長く維持管理するのも団の力量

「同じ地域に住む団員同士の関係が深まれば、自然と地域の安全や安心も高まる」と語るまとめ役の小松分団長

訓練後には香川県らしくみんなで「たらいうどん」を
チームTシャツは五重塔
シグナル製作の第五分団チームTシャツのデザインは善通寺市を代表するお寺、総本山善通寺の五重塔がモチーフ。
平成28年9月18日に開催された香川県消防操法大会において、小型ポンプの部に出場した第五分団が前評判を覆して見事優勝。善通寺市の消防団として34年ぶりの快挙でした。第五分団の優勝はこれで通算2回目です。

宣言どおりの優勝を勝ち取り、熱い努力と想いが報われた瞬間
善通寺市消防本部のアドバイスを受けながら、大会前1カ月半の間、集中して訓練に取り組んだ第五分団。真夏の暑さのなか、仕事が終わってからの毎夜の訓練を乗り切ったことも大会への自信につながりました。

操法大会のポイントの一つであるキビキビとした正確な動作を反復

出場選手ではない団員も団結力を発揮して訓練を全力でサポート
善通寺市消防団全分団参加による消防団総合訓練
平成29年3月5日(日)開催
毎年3月1日から7日までの一週間、「春の全国火災予防運動」が実施されていますが、善通寺市でもこの時期にあわせ、山火事を想定した消防団総合訓練を行なっています。大規模な火災に対応できるように各分団間の連携活動を確立し、資機材の円滑な活用と士気高揚をはかることが目的です。
3月5日の当日は、朝から会場となる天霧山の麓に各分団員が車両や資機材とともに集結し、善通寺市消防本部職員指導のもと、熱のこもった訓練が展開されました。

訓練会場の天霧山中腹、第2火点付近から放水中の第1火点方面を望む

山の中腹に仮想された2カ所の火点に向かって2つのルートでホースを延長。各ポイントに配置したポンプで中継しながら放水地点まで水を送ります。山道を登りながら何本もホースを延ばしてつなぐ体力と技術、そして統制された連携が必要とされる訓練です。
宮武消防団長

団長の出場指令により、サイレンを吹鳴しながら続々と山を上がってくる各分団の小型動力ポンプ積載車。

ホース延長のため山道を駆け上がる。第五分団は合計20本ものホースをつなぐので、ある程度の距離を想定して同時に複数のホースを延ばし、時間の短縮をはかる。

麓にあるため池を水利として送水開始。香川県にはため池が多い。

複数のポンプを経由して水が送られてくる。第二班は水利から放水まで10カ所のポンプを経由。

第1火点に向けて放水開始。放水要員は防火服を着用する。続けて第2火点にも放水が始まる。

現場指揮者が完全鎮火を確認後、本部から撤収指令。延長したホースを巻き取り速やかに撤収。
消防団だからこその強みを生かして
周知のとおり消防団員は常勤の消防職員とは異なり、自分の仕事をほかに持ちながら訓練や活動を行なっています。そうした負担が敬遠される傾向にあるのに加え、近年は少子高齢化や大都市への人口集中などが重なって、その担い手不足が地方での大きな課題の一つ。
しかし、「どこに何人住んでいるのか」「誰がどこの水利を管理しているのか」といった細かな地域の情報を常に把握して災害時の活動に生かせるのは、同じ地域に暮らす消防団だけです。特に雨が少なく昔から水が何よりも貴重とされてきた香川県においては、地域に根ざして信頼関係を築いた消防団でなければ、火災の際に速やかに水利をとることは困難です。この重要な役割を果たし続けるために、今後も第五分団では団員同士、団員と地域との関係強化に引き続き取り組んでいきます。
【取材協力】
善通寺市消防団第五分団
SUMMER 2017/FIRE RESCUE EMS vol.78