2021.2.28
【第4回 使用?着用?フルハーネス】
〜連載企画 ROPE RESCUE COLUMN ロープレスキュー ここが知りたい!〜
前回の「二系統の考え方」はいかがでしたでしょうか?今回はフルハーネスの
基本に焦点を当ててみたいと思います。
フルハーネスを使用する場合、原則としてロープ高所作業または墜落制止用器具の特別教育を受講する必要があります。しかし一般的な特別教育の講座では消防活動でおもに用いられている海外製のフルボディーハーネスの着用方法を習うことはありません。今回も基本的な内容となりますが、皆さんの参考になれば幸いです。
◎どんな資器材もまずは取扱説明書を熟読することから始めましょう!
1. 着用の方法
①ハーネスの点検
まずは点検です。Office-R2主催の講習会でも必ず点検から始めますが、破損や誤った組み立てにより危険な状態の参加者が毎年、数名いらっしゃいます。
破損 →カラビナや回転防止ピン、ベルト類に変形・破損・激しい摩耗はありませんか?
腐食 →金具類は錆びていませんか?見えている部分はもちろん、ベルトで隠れている部分はどうですか?制服の一部として恥ずかしくない状態ですか?ちゃんと手入れしましょう。
諸元 →製造年月や規格の適合状況を表示タグで確認してください。少なくとも製造から10 年が経過したものは使用できません。リコールや不良品が発生した場合の確認にも使いますので、表示タグは絶対に切り取ってはいけません。
②実際に着用する
ウエストベルト →苦しくない程度にしっかり締めましょう。よく間違えられるのですが、「ウエストベルト」であり「ヒップベルト」ではありません。安全帯と違い、腰骨を覆うのではなく、腰骨より上方で締める必要があります。腰で締めてしまうと腰パン状態になってしまうだけでなく、ロープにぶら下がった途端に上にずり上がり、緩くなってしまいます。活動服や防火衣と同じように、フルハーネスの腰履きはダサいうえに不安全だと理解してください。
ショルダーベルト →先に背面の調整をしておく必要があります。背部D環が肩甲骨の位置にくるのが適切です。背部のパッドが襟に届いているのは、位置が高すぎて不適切です。かっこ良さそうに見えますが、見る人が見たら…ですので気をつけましょう。次に前面のベルトを調整しますが、ぶら下がってから調整するようにしましょう。立姿勢で調整した長さでは、ぶら下がった際に緩みが出ます。これも非常にだらしなく見えますので、訓練や広報写真を撮る際には十分気をつけましょう。(もちろんすべての場面で気をつけて!)
レッグベルト →脚は手の平が入るか入らないかの締め具合、もしくはしゃがんだ状態で締め込んでください。しゃがんだときに妨げにならないギリギリが適正です。ここが緩いと、ぶら下がった際にハーネス全体がずり上がり、作業効率が悪化したり、身体に負担をかけることもあります。
以上のような点検や調整が必要になりますので、ベルト類を結束バンド等で固定してしまうような行為はNGです。心当たりのある方はすぐにやめましょう。
2. 使用方法
①胸部アタッチメントポイント
胸部のアタッチメントポイント(D環)は、原則として墜落制止用ランヤードまたはライフライン器具、ビレイロープの接続に使います。ここで隊員を吊るして作業をすることもありますが、体動がかなり制限されるためあまりお勧めしません。
②腹部アタッチメントポイント
作業姿勢(メインロープ)のためのD環です。作業半径が広く、自由な活動が可能です。ロープレスキュー等では、ここに取り付けたロープランヤードを使って簡易の確保をとることがあります。また、確保ロープを取り付けて自己確保とする方も多く見受けられます。それらは国内はもちろん国際的にも墜落制止の基準には適合していません。ここはあくまでシットハーネスであり、安全性は安全帯と大差はありませんので注意してください。
③側部アタッチメントポイント
腰の両サイドにあるD環は、「U字吊り」という電柱や樹木作業で使う作業姿勢器具の取り付け時に使います。間違ってもここに確保ロープを取り付けてはいけません。「ちょっとぐらい大丈夫でしょ」と思う方は、一度そのD環で吊られてみましょう。
④背部アタッチメントポイント
背部のD環も胸部同様、墜落制止用ランヤードやビレイロープを取り付けるためにあります。しかし、ここで宙吊りにされると非常に不快なだけでなく、身体への影響も大きいほか活動上の不都合もありますので、ここを使用することは原則としてお勧めしていません。
これらの内容を覚えるだけではなく、一度は各アタッチメントポイントで宙吊りになってみてください。体感する・させることで理解できることも多くあります。(ケガやパワハラにならない程度で!)
今回は誌面の都合で最低限のポイントに絞りました。ぜひ資器材と法令に詳しい講師から教育を受け、安全に訓練・現場活動を行いましょう。
きちんと見極められますか?
- 腰履き
- 法令に適合しないランヤード
- ランヤードが首に巻かれている
- 結ばれて即応できない腰部ランヤード
- 脚部ベルトの緩み、ねじれ
- 固定されて再調整できない肩ベルト
- 首元まで伸びきっている
背部・胸部ベルト - 未調整の臀部ベルト
- 誤った位置にかけられたカラビナ
- カラビナの安全環が開いている
- 古すぎるハーネス
大西 隆介(おおにし りゅうすけ)
1987年生まれ。大学時代に公共政策を学び、部活では登山やクライミングに没頭した経験からロープレスキューの世界へ。日本の労働安全法令や消防組織に適した救助技術を研究している。救助大会「縄救」や「日台消防交流会」などのイベントも主宰。
office-R2 ロープレスキュー講習主に11mmロープと欧米の資器材を用いた「目的としてではなく救助の手段としてのロープレスキュー」技術講習。レベル1~2講習は基礎的な技術と知識のほか、国内法令や安全管理について学ぶ。受講者には「ロープ高所作業」「フルハーネス」の特別教育修了証が交付される。
講習などの情報はHP、facebook、Instagramなどで随時CHECK!
お問い合わせ090-3989-8502
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